地形学

侵食輪廻説の概要と地形発達のプロセス

地形輪廻(侵食輪廻)は、河川の侵食作用によって地形が幼年期から老年期、そして準平原へと変化する過程を説明する地形学の理論です。ウィリアム・モーリス・ディヴィスが提唱したこの概念と各段階の解説。

📌 主なポイント

  • 侵食輪廻はウィリアム・モーリス・ディヴィスによって提唱された地形発達モデルである。
  • 地形は幼年期、壮年期、老年期を経て準平原へと変化するとされる。
  • 回春とは、隆起などにより侵食作用が再び活発化し、地形発達のサイクルが中断・再開される現象である。

侵食輪廻(しんしょくりんね、英: geographical cycle)は、河川による侵食作用が地表の起伏をどのように変化させていくかという過程を体系化した地形学の理論である。アメリカの地理学者ウィリアム・モーリス・ディヴィス(William Morris Davis)によって19世紀末に提唱された。この理論では、地形が隆起した直後の状態から、侵食を経て平坦な準平原に至るまでの段階を「幼年期」「壮年期」「老年期」という生物学的な比喩を用いて分類する。

地形発達の各段階

地形輪廻のプロセスは、地殻変動によって形成された原地形から始まり、時間の経過とともに以下の段階を経て進行する。

原地形

侵食が始まる前の初期段階である。火山活動による山体や、海底から隆起したばかりの平野などが該当する。この段階では、地表は比較的平坦または単純な起伏を持つ。

幼年期地形

侵食作用が活発化する初期段階である。河川の下刻作用が強く、深いV字谷が形成される。谷以外の場所では原地形の平坦面が残存していることが多い。

壮年期地形

地形の起伏が最大に達する段階である。原地形の面はほとんど失われ、鋭い尾根や深い谷が発達する。山地全体が複雑な起伏を見せるのが特徴である。

老年期地形

侵食が進み、起伏が緩やかになる段階である。谷幅が広がり、山頂や尾根は丸みを帯びた丘陵状に変化する。河川の侵食力は低下し、侵食基準面に近づく。

準平原

地形輪廻の最終段階である。長期間の侵食により、地表は侵食基準面に近い平坦な平原となる。この平原上に侵食から取り残された小高い丘を残丘(モナドノック)と呼ぶ。

回春

地形輪廻の過程において、地殻の隆起や侵食基準面の低下が発生すると、侵食作用が再び活発化する。これを回春(かいしゅん、rejuvenation)と呼ぶ。回春が起こると、老年期や準平原の状態にあった地形が再び幼年期のような激しい下刻作用を受け、新たな地形輪廻が開始される。

よくある質問

地形輪廻と侵食輪廻の違いは何ですか?
両者は同じ概念を指す同義語です。どちらもウィリアム・モーリス・ディヴィスが提唱した地形発達の過程を指します。
準平原とはどのような状態ですか?
長期間の侵食作用により、山地が削られ、侵食基準面に近い平坦な平原となった地形の状態を指します。
回春が起こると地形はどうなりますか?
地殻の隆起などにより侵食基準面が相対的に低下し、河川の下刻作用が再び活発化することで、地形が若返ったような状態(幼年期地形の形成)になります。

関連記事

地形学侵食地殻変動準平原

参考文献

  • Davis, W.M. 1899. "The geographical cycle". Geographical Journal of the Royal Geographical Society, 14, 481-504.
  • 髙山茂美「回春」『日本大百科全書(ニッポニカ)』小学館。