地理学
氷食:氷河による地形の侵食作用とプロセス

氷河が岩盤を削り取る侵食作用「氷食」について解説。削磨や剥ぎ取りといったメカニズム、氷食地形の特徴、および氷食輪廻の概念について詳述します。
📌 主なポイント
- ✓氷食は氷河の流動によって岩盤が削られる侵食現象である。
- ✓主な作用には、微細な粒子による研磨を行う「削磨」と、岩塊を物理的に引き剥がす「剥ぎ取り」がある。
- ✓氷食輪廻は、山地氷河による地形変化の過程を説明する地理学的な概念である。
氷食(ひょうしょく)とは、氷河の流動に伴い、地表の岩石や土砂が削られ、侵食される現象を指す。氷河は巨大な質量を持ち、重力に従ってゆっくりと移動する過程で、地表に対して強力な物理的変化をもたらす。侵食に対する抵抗力が高い岩盤ほど、氷食による地形の変化が顕著に現れる傾向がある。
侵食のメカニズム
氷食の作用は、主に削磨(さくま)と剥ぎ取り(はぎとり)の二つに大別される。
削磨
氷河の底面に付着した岩粉や砂礫が、ヤスリのように岩盤を研磨する作用である。また、氷河に抱え込まれた硬い岩石片が岩盤を擦ることで、流動方向に沿った擦痕(さっこん)や条痕、溝が刻まれる。
剥ぎ取り
氷河が岩盤の節理や割れ目に侵入し、凍結と融解を繰り返すことで岩塊を物理的に引き剥がす作用である。これにより、急峻な崖や特徴的な谷地形が形成される。
氷食地形
氷河による侵食の結果として形成される地形を氷食地形と呼ぶ。氷河は侵食だけでなく、削り取った岩屑を運搬し、下流部で堆積させる作用も持つ。代表的な地形には、氷河の侵食によって形成されたU字谷やカール(圏谷)がある。

氷河によって運搬・堆積された物質はティルと呼ばれ、これが大規模に堆積するとモレーンやドラムリンといった地形を構成する。また、周囲の堆積物が流出した後に残された巨大な岩石は、迷子石として知られる。
氷食輪廻
氷食輪廻は、氷河の侵食による地形変化の過程を系統立てた概念である。1909年にW.M.デイヴィスが提唱し、1911年にW.H.ホッブズによって詳述された。この理論は山地氷河による侵食過程を説明するものであり、地盤隆起や気候変動によって山体が再び氷河の影響を受けることで、地形変化が繰り返されるプロセスを指す。ただし、大陸氷河のように地表が完全に氷体下に埋没する環境には適用されない。
よくある質問
氷食と氷食症の違いは何ですか?
氷食は地理学用語で氷河による地形の侵食を指しますが、氷食症は氷を無性に食べたくなる異食症の一種を指す医学用語であり、全く異なる概念です。
ティルとは何ですか?
氷河によって運搬され、堆積した岩屑や土砂の混合物のことを指します。
氷食輪廻はどのような地形に適用されますか?
主に山地氷河による侵食地形の形成過程を説明するために用いられる概念です。
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参考文献
- 浮田典良編『最新地理学用語辞典:改訂版』大明堂、2003年。
- Susan Mayhew編『オックスフォード地理学辞典』田辺裕監訳、朝倉書店、2003年。