地形学
氷河湖の形成と特性
氷河の作用によって形成される氷河湖の定義、形成メカニズム、分類、および氷河湖決壊洪水などの環境リスクについて解説します。
📌 主なポイント
- ✓氷河湖は氷河の侵食、堆積、融解水の集積によって形成される。
- ✓氷食湖は岩盤が削られてできるため、一般的に規模が大きく水深が深い。
- ✓氷河湖決壊洪水は、モレーンや氷体の決壊により発生する災害である。
氷河湖とは、氷河の侵食作用や堆積作用、あるいは氷河の融解水の集積によって形成された湖沼の総称である。主に寒冷地域や高山帯に分布し、氷河の消長に伴って形成される。
形成メカニズムと分類
氷河湖の形成過程は、主に以下の3つのタイプに分類される。
- 氷食湖(侵食型):氷河の移動に伴う強力な侵食作用によって岩盤が削られ、形成された凹地に水が溜まることで生じる。一般に規模が大きく、水深も深いことが特徴である。
- モレーン堰止湖(堆積型):氷河が運搬・堆積した土砂や岩屑(モレーン)が谷をせき止めることで形成される。氷河の後退期に山岳地域で多く見られる。
- 融氷水湖:氷河の融解水が低地や凹地に集積して形成される。氷期の末期や氷河後退期に多く出現する。
環境リスクと災害
氷河湖に関連する重大な自然災害として「氷河湖決壊洪水(GLOF)」が挙げられる。これは、氷河前縁湖をせき止めているモレーンや氷体が決壊し、大量の水が下流へ流出することで発生する洪水や土石流である。特に地球温暖化の影響で氷河が縮小し、氷河湖の貯水量が増加している地域では、決壊の危険性が高まっていると指摘されている。
雪食湖との違い
氷河湖(特に氷食湖)と混同されやすい地形に「雪食湖」がある。雪食湖は、長期間残留する雪田や万年雪の融解水による侵食作用(雪食)によって形成される小規模な湖沼である。氷食湖が氷河という巨大な氷塊の移動によって形成されるのに対し、雪食湖はより小規模で、融雪期にのみ水が溜まる季節湖として存在することが多い。
よくある質問
氷食湖とモレーン堰止湖の違いは何ですか?
氷食湖は氷河の侵食作用で岩盤が削られて形成されるのに対し、モレーン堰止湖は氷河が運んだ土砂(モレーン)が谷をせき止めることで形成されます。
氷河湖決壊洪水とは何ですか?
氷河湖をせき止めているモレーンや氷体が決壊し、貯留されていた水が急激に下流へ流出する災害のことです。
日本に氷河湖はありますか?
日本にはU字谷に形成された典型的な氷河湖の例は確認されていませんが、モレーンによってせき止められた湖の例として豊似湖などが挙げられます。
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参考文献
- 岩田修二『氷河地形学』東京大学出版会、2011年、240頁。
- 松倉公憲『地形学』朝倉書店、2021年、272頁。
- 中野尊正・式正英『新版 地形の教室』古今書院、1986年、100頁。