自然地理学
氷河:地球の流動する氷体

氷河の定義、分類、形成過程、および日本国内で確認されている氷河の現状について解説します。
📌 主なポイント
- ✓氷河は重力によって継続的に流動する多年性の氷体である。
- ✓氷河の形成には、積雪がフィルンを経て氷河氷へと変化する長期間の圧縮過程が必要である。
- ✓日本国内では、2025年時点で北アルプスに9カ所の氷河が確認されている。
氷河(ひょうが、英: glacier)は、地球表面において、積雪が長期間かけて圧縮・変成し、重力の影響を受けて継続的に流動する氷の塊を指します。広義には氷床や氷帽を含み、狭義には山岳地帯の谷を流下する山岳氷河を指すこともあります。
国際的に広く参照される定義として、R.F.フリントによる「積雪が自然に堆積して形成した大きな雪氷体で、大部分が陸上に存在し、現在流動しているかあるいは過去に流動したことのあるもの」という概念が知られています。

形成過程
氷河は、降雪が融解と凍結を繰り返すことで形成されます。まず、雪は「ネヴェ(ざらめ雪)」と呼ばれる状態になり、さらに圧力を受けて「フィルン」という粒状の氷へと変化します。これが長年かけてさらに圧縮されることで、緻密な「氷河氷」となります。
分類
氷河は、その規模や地形、温度条件によって分類されます。国際雪氷委員会(ICSI)の分類では、大陸氷床、氷原、氷帽、溢流氷河、谷氷河、山腹氷河、小氷河・雪原、棚氷、岩石氷河の9種類に大別されます。また、末端が海や湖に達し、氷山を分離するものは「カービング氷河」と呼ばれます。

日本における氷河
かつて日本には氷河は存在しないと考えられてきましたが、近年の研究により、北アルプス(飛騨山脈)において氷河の存在が確認されています。2012年に立山連峰の御前沢雪渓、剱岳の三ノ窓雪渓、小窓雪渓が日本初の氷河として認定されました。その後、2018年には鹿島槍ヶ岳のカクネ里雪渓が、2019年には唐松岳の唐松沢雪渓が氷河として確認されました。さらに2025年の調査により、杓子沢雪渓と不帰沢雪渓も氷河であることが確認され、日本国内で確認された氷河は計9カ所となっています。

よくある質問
氷河と雪渓の違いは何ですか?
雪渓は単なる多年性の雪の塊を指すことが多いですが、氷河はそれ自体が重力によって流動していることが科学的に確認されたものを指します。
日本に氷河はありますか?
はい、北アルプス(飛騨山脈)において、立山、剱岳、鹿島槍ヶ岳、唐松岳、白馬連山などで計9カ所の氷河が確認されています。
カービング氷河とは何ですか?
末端が海や湖に流れ込み、氷塊が崩れ落ちて氷山を形成する氷河のことです。
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参考文献
- 吉田勝「日本の氷河と世界の氷河―飛騨山脈カクネ里氷河見学会から(前編)」『地学教育と科学運動』第83巻、2019年。
- 福井幸太郎・飯田肇「飛騨山脈, 立山・剱山域の3つの多年性雪渓の氷厚と流動 : 日本に現存する氷河の可能性について」『雪氷』第74巻第3号、2012年。
- 白馬村「白馬連山の氷河調査(杓子沢・不帰沢・白馬沢)」2026年。