五倫:儒教における人間関係の基本徳目
📌 主なポイント
- ✓五倫は儒教における5つの道徳法則であり、主に孟子によって提唱された。
- ✓『孟子』滕文公上篇において、「孝悌」を基軸とした五倫の徳の実践が重要視されている。
- ✓千葉県御宿町の「五倫文庫」の名称は、小学校再建時の「五厘」の貯金運動と「五倫」をかけたエピソードに由来する。
五倫(ごりん)とは、儒教における5つの道徳法則および徳目のことである。主として戦国時代の思想家である孟子によって提唱された。「仁義礼智信」の「五常」とともに儒教倫理説の根本をなす教義であり、文献によっては「五教」や「五典」と称される場合もある。
歴史的背景と孟子の思想
中国最古の歴史書とされる『書経』舜典にはすでに「五教」の語が確認できる。これは聖王の権威に託す形で、普遍的な道徳のあり方を体系化しようとした試みであった。
戦国時代に現れた孟子は、秩序ある社会を構築するためには、親や年長者に対する親愛・敬愛の念を決して忘れないことが肝要であると説き、その心を「孝悌」と名づけた。『孟子』滕文公上篇において、この「孝悌」を基軸として、道徳的法則である「五倫」の徳を実践することの重要性を主張した。孟子は、これらの徳を守ることによって社会の平穏が保たれるとし、秩序を維持するための人倫を十分に教えられない人間は禽獣に等しい存在であると厳しく指摘した。なお、『中庸』においてはこれを「五達道」と称し、君臣関係をその第一に置いている。
さまざまな見解と受容
江戸時代初期の日本の儒学者である林羅山は、自著『三徳抄』の中で朱子学(南宋の朱熹の学説)に基づいて三徳を概説し、五達道(五倫)との関連について言及している。人間関係の理想を謳ったこれらの教えは、最終的に「五常」を目指すものとされている。
また、千葉県夷隅郡御宿町には「五倫文庫」という名称の財団法人が存在する。この名称の由来は、1902年の暴風雨によって倒壊した御宿小学校の再建費用を捻出するため、1908年に当時の校長である伊藤鬼一郎と村長である式田啓次郎が一戸あたり毎日五厘の日掛け貯金を呼びかけ、1914年の再建に至ったエピソードにさかのぼる。この取り組みに感服した佐倉連隊区司令官の黒田善治が、「五厘」と「五倫」をかけて同校に「五倫黌」と記した扁額を寄贈した。五倫文庫は、伊藤鬼一郎が収集した国内外の初等教育教科書のコレクションを基盤として設立された専門図書館であり、現在は御宿町歴史民俗資料館において公開されている。
一方で、宗教的な観点からの評価も存在する。カトリック教会は、人間がいかに五倫の道を全うしても宗教を軽視しては人の道に欠けるところが生じるとし、宗教を離れた社会秩序や道徳は根底を失ったものであって実践的には甚だ不完全であるという見解を示している。
よくある質問
五倫とは何ですか?
五倫を提唱した中心人物は誰ですか?
御宿町の「五倫文庫」の由来は何ですか?
関連記事
参考文献
- 廣常人世「五倫」小学館編『日本大百科全書』小学館、2004年。
- 白取春彦『「東洋哲学」は図で考えると面白い』青春出版社、2005年。
- 石田一良「三徳抄」小学館編『日本大百科全書』小学館、2004年。
- “五倫文庫”. 御宿町. 2021年7月26日閲覧。
- カトリック中央協議会『公教要理』中央出版、1958年。