軍艦の一種である砲艦の歴史と運用

📌 主なポイント
- ✓砲艦は比較的小型で主として沿岸や河川で活動する火砲を主兵装とした水上戦闘艦艇である。
- ✓設計思想により、重武装の戦闘用砲艦と、通信・指揮能力に優れた平時警備用の砲艦に大別される。
- ✓日本海軍では歴史的経緯や外交上の役割から、かつては正式な「軍艦」として扱われていた。
砲艦(ほうかん)は、軍艦の一種であり、比較的小型で主として沿岸・河川・内水で活動する、火砲を主兵装とした水上戦闘艦艇の事を指す。英語ではGunboatと称し直訳すると砲艇となるが、日本語では比較的大型のものを砲艦、小型のものを砲艇と使い分けることが多い。
概要
19世紀前半の帆走軍艦時代にガンブリッグと呼ばれた艦種が砲艦という艦種に引き継がれたというのが定説であるが、これより以前にはガンブリックより小型の物でガンボートと呼ばれたものがある。砲艦の範囲は広く、海防艦や通報艦、スループなども広く砲艦に入れる場合がある。また、単に砲艦や砲艇と称する場合は河用砲艦を指すこともある。

砲艦の設計思想は大きく2つに分けることができる。1つは船体規模に比べ強力な火砲を備え前線での戦闘に使用する重武装の砲艦であり、もう1つは武装は少ないが強力な通信・指揮能力を備えて平時の警備任務に重きを置いた砲艦である。
有事用の砲艦
本格的な軍艦を保有できない小国を中心に沿岸防衛を目的として配備された。19世紀後半に建造されたレンデル式砲艦がその典型例である。また、小型の砲艇サイズのものには前線での戦闘任務を想定した設計のものが多く、第二次世界大戦中のソビエト連邦における装甲砲艇や、イギリスの機動砲艇などが挙げられる。

ベトナム戦争においてアメリカ海軍は揚陸艇や民間用ボートを改造した河用砲艇を実戦に投入した。ロシアやウクライナ、セルビア等で使用されている砲艦はこうしたタイプの発展形であり、戦車砲や対戦車ミサイルなどを装備して地上戦への支援攻撃も可能である。

平時の用の砲艦
第二次世界大戦以前の中国において活動した諸外国の河川砲艦が代表的である。揚子江などの河川で活動するため概ね浅喫水であった。これらの河川砲艦は武装こそ少ないものの指揮・通信能力は高く、「動く領事館」として政治・外交活動に用いられた。そのため格式が重視され、艦長には少佐以上の高級将校が当てられることが多かった。

現在でも南米のブラジルやパラグアイなど大河流域の国において、高い通信能力や医療設備を持つ砲艦(砲艇)が存在している。

ブラジル海軍の「パルナイバ」のように76ミリ砲を搭載しているタイプもある。

日本海軍における砲艦
日本海軍においては、幕府海軍や諸藩から献納された軍艦の大半がGunboatであり新政府軍の保有する最大級の艦艇であったため、伝統的に砲艦が重視された。伏見をルーツとする小型の河川砲艦も菊の御紋を装着して正式な軍艦として就役した。太平洋戦争中の1944年の基準改定で、砲艦は国内法上の狭義の軍艦からは除かれ、独立の艦種である砲艦に格下げとなった。
よくある質問
砲艦とはどのような艦艇ですか?
河川用砲艦はどのような任務に使われましたか?
関連記事
参考文献
- 石橋孝夫『艦艇学入門-軍艦のルーツ徹底研究』光人社〈NF文庫〉、2000年。
- ケンプ・トリー『長江パトロール』長野洋子訳、出版共同社、1988年。
- 『世界の艦船 増刊第47集 日本海軍特務艦船史』海人社、1997年。