軍部:定義と政軍関係における役割
📌 主なポイント
- ✓軍部は広義には軍隊全体を指すが、政治学では文民政府に対して自立性を持つ軍事専門職集団を指すことが多い。
- ✓戦前の日本では、統帥大権や軍部大臣現役武官制などの制度が、軍部の政府からの独立性を支えていた。
- ✓戦後の日本では、自衛隊が文民統制下に置かれており、戦前のような軍部による政治介入は制度的に抑制されている。
軍部(ぐんぶ)とは、広義には国家が保有する陸軍・海軍・空軍などの軍隊組織全体を指す言葉である。しかし、政治学や歴史学の文脈においては、単なる軍隊の総称ではなく、文民政府(政治権力)に対して相対的な自立性を持ち、政治的影響力を行使する軍事専門職集団を指す用語として用いられることが多い。
政軍関係における軍部
政治学における「政軍関係(civil-military relations)」の議論において、軍部は文民政府との対立や協力の主体として扱われる。特に権威主義体制下や、軍が政治介入を行う国家において、軍部は文民政府の統制を離れ、独自の政治勢力として振る舞うことがある。サミュエル・P・ハンティントンは、近代的な将校団の特質として、専門技術性、国家安全保障に対する責任、そして社会から区別された団体性を挙げ、これらが軍部の実態を考察する際の出発点となっている。
日本における軍部
戦前の日本において「軍部」という言葉は、主に陸軍省、海軍省、参謀本部、軍令部といった軍の上層部を指す用語として定着した。これらの組織は、大日本帝国憲法下で保障された統帥大権や軍部大臣現役武官制、帷幄上奏権といった制度的背景により、政府から独立した権限を行使することが可能であった。
三宅正樹の指摘によれば、日本において「軍部」という表現が政治的な批判や警戒を込めて頻繁に使用されるようになったのは、軍が政党政治家や官僚といった文民政治勢力に対して自立性を強め、政治的に圧倒する存在となった時期からである。戦後の日本では、自衛隊が制度的・実質的に文民統制(シビリアン・コントロール)下に置かれているため、戦前のような軍部による政治介入は構造的に困難となっている。
軍事専門職業論
軍部の定義を考える上で、軍隊を単なる暴力装置ではなく、高度な専門技術を持つ職業集団と捉える視点がある。ハンティントンの政軍関係論は、軍隊の専門化が文民統制を容易にするという「客体的文民統制」の論理を提示したが、これに対しては軍の政治化を招くという批判もなされており、軍部と政治の関係は現代においても重要な研究課題である。
よくある質問
「軍部」という言葉はどのような文脈で使われますか?
戦前の日本で軍部が強大な権限を持てた理由は何ですか?
現代の日本において軍部による政治介入は可能ですか?
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参考文献
- コトバンク「軍部(グンブ)とは? 意味や使い方」
- 三宅正樹『昭和期の軍部と政治1 軍部支配の開幕』第一法規、1983年。
- Samuel P. Huntington, The Soldier and the State: The Theory and Politics of Civil-Military Relations, Cambridge University Press, 1957.
- Edward J. Drea, Japan's Imperial Army: Its Rise and Fall, 1853–1945, University Press of Kansas, 2009.