化学

気体から固体への相転移「凝華」の定義と用語の変遷

気体から固体への相転移「凝華」の定義と用語の変遷
元素や化合物が液体を経ずに気体から固体へと相転移する現象「凝華(ぎょうか)」の定義、相図における条件、および日本における用語の変遷について解説します。

📌 主なポイント

  • 凝華は、元素や化合物が液体を経ずに気体から固体へと相転移する現象である。
  • 温度と圧力の交点が相図上の三重点より下にある場合に発生する。
  • 日本語では長らく気体から固体への変化も「昇華」と呼ばれていたが、日本化学会の提案により2022年施行の新課程教科書から「凝華」の表記が導入された。

凝華(ぎょうか、英語: deposition)とは、元素や化合物が液体を経ずに気体から固体へと相転移する現象を指す。物質の温度と圧力の交点が相図上の三重点より下方に位置する場合に起こる現象である。

一般的な物質の相図。三重点以下の温度または圧力(赤線部分)で凝華が起こる。
一般的な物質の相図。三重点以下の温度または圧力(赤線部分)で凝華が起こる。

概要

標準的な気圧の下では、多くの化合物や元素が温度変化に伴って固体、液体、気体の三態の間を相転移する。通常、気体から固体へ変化する際には中間の状態である液体を経由するが、特定の条件や一部の物質においては、気体と固体間を直接行き来する相転移が見られる。

英語圏では主に「deposition」と称され、文脈によっては「desublimation」が用いられることもある。また、厳密には不正確とされるものの「sublimation」と表現される場合もある。

用語の変遷と導入の経緯

日本語の科学教育や文献においては、長年にわたり気体から固体への相転移を指す用語として「昇華」が使われてきた。この用法は1950年代頃からの高等学校用検定教科書や、1955年以降の『広辞苑』などで確認されている。こうした混同が生じた背景には、昇華精製という化学操作の名称に対する誤解があったと指摘されている。

一方で、明治時代以降の化学者の間では、固体から気体への変化、および昇華精製を指す言葉として「昇華」が用いられてきた。第二次世界大戦後も『理化学辞典』や『化学大辞典』などの専門辞書では、この伝統的な用法が継続して記載されていた。

しかし、気体から固体への相転移を「昇華」と呼ぶことに対しては、化学者から疑問が呈されるようになった。1980年代には新谷光二らによる議論がなされ、細矢治夫らは中国語圏で用いられていた「凝華」という用語の導入を提案した。こうした背景を受け、日本化学会は2015年に「凝華」の使用を正式に提案し、教科書の表記も見直されて2022年施行の新課程では本文に「凝華」が記載されるようになった。

よくある質問

凝華とはどのような現象ですか?
物質が液体という中間の状態を経ることなく、気体から直接固体へと相転移する現象のことです。
凝華はどのような条件下で起こりますか?
温度と圧力の交点が、物質の相図上における三重点よりも下方に位置する場合に起こります。
なぜ「凝華」という新しい用語が使われるようになったのですか?
従来は気体から固体への変化も「昇華」と呼ばれていましたが、固体から気体への変化と混同しやすく正確性を欠くため、日本化学会が2015年に新たな用語として「凝華」を提案し、教科書などでも採用されるようになりました。

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参考文献

新谷光二「高校化学教科書の問題点: 『昇華』とはいかなる過程, 操作か」『化学と教育』第32巻第6号、日本化学会、1984年。
日本化学会化学用語検討小委員会「高等学校化学で用いる用語に関する提案(1)」『化学と教育』第63巻第4号、日本化学会、2015年。