漁網の構造と技術、環境への影響に関する総合解説

📌 主なポイント
- ✓漁網は網地、綱、浮子・沈子などで構成されており、漁業において大量の水生生物を採捕するために用いられる。
- ✓1950年頃からナイロンなどの合成繊維製漁網が普及し、水中での腐敗耐性や高い強度がもたらされた。
- ✓放置・流出した合成樹脂製の漁網は「ゴースト・ギア」と呼ばれ、海洋汚染や野生生物の混獲・衰弱死を引き起こす環境問題となっている。
- ✓使用済み漁網は、鳥獣害防止ネットや、紛争地におけるドローン防御資材などの用途に転用されることもある。
漁網(ぎょもう)は、魚介類を捕獲するために用いる網であり、漁業において不可欠な漁具の一種である。また、漁網を用いて行われる漁撈活動は網漁と総称される。広く漁業用の網と定義される場合には、水産物の養殖用に用いられる網も漁網に含まれることがある。
多様な漁具のなかでも、漁網は「一網打尽」の言葉通り、大量の水生生物を効率よく採捕できるため、高い漁獲収益を期待できる。網を用いる漁法は、捕獲対象となる水生生物の種類や操業環境、規模によって多岐にわたり、漁獲量を高めるための技術的工夫や研究が長年にわたり重ねられてきた。
漁網の構成
漁網は、網地、綱、浮子・沈子(網を海中に保持するための用具)、錨、浮き樽(目印となる用具)などによって構成されている。

網地の種類と材質
漁網の網地は、糸の結び目(結節)の有無によって「有結節網」と「無結節網」に大きく分けられる。また、樹脂を延伸等することにより網の形にした成型網もあり、安全ネットや防風網などに使用されている。

網の材料繊維には、伝統的な天然繊維と、現代で主流となっている合成繊維がある。かつては麻、木綿、絹、苧糸、藁、葛糸、蚕糸などの天然繊維が用いられていたが、有機物の付着やプランクトンなどの腐蝕虫によって腐敗しやすいという欠点があった。1950年には日本漁業においてナイロン(アミラン)漁網の使用が普及し始め、水中で腐敗しないことや過酷な環境に耐える強度が利点として認識されるようになった。

現在では、曳き網などにポリエチレン系(ハイゼックスなど)、刺網や定置網にポリアミド系(ナイロンなど)、巾着網などにポリエステル系(テトロンなど)といったように、漁法に合わせた最適な繊維素材が選ばれている。

漁網の種類
民俗学者である田辺悟の分類によると、漁網は以下のように類別される。
- 抄網類・掬網類
- かぶせ網類(投網など)
- 刺網類
- 敷網類
- 曳網類(トロール網など)
- 繰網類
- 旋網類・まわし網類
- 建網類
環境への影響とゴースト・ギア問題
漁業資源の維持という観点において、漁網の使用は乱獲や混獲といった問題を招きやすく、多くの網漁が法的規制の対象となっている。特に合成樹脂製の漁網は自然分解されないため、適切な管理や処分が行われない場合に深刻な海洋ごみとなる。ナショナルジオグラフィックの報道等によれば、太平洋ゴミベルトの46%が漁網であると指摘されている。
このように海洋を漂流する廃棄・流失した漁網は「ゴースト・ギア(Ghost Gear)」と呼ばれ、海岸に漂着した漁網がエゾシカなどの野生生物を絡めて衰弱死させる事例も報告されている。こうした背景から、廃棄漁網の回収、再利用、再資源化に向けた取り組みも各地で試みられている。
漁業以外への転用
漁網は本来の漁業目的以外にも転用されている。日本では農作物の鳥獣害防止ネットとして活用されているほか、2022年に始まったロシア連邦によるウクライナ侵攻においては、自爆ドローンを絡めとって突入防止や爆発被害を軽減するための防御資材として欧州各国から集められ利用されている。
よくある質問
漁網の主な材質は何ですか?
「ゴースト・ギア」とは何ですか?
漁網は漁業以外にどのように使われていますか?
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参考文献
野村正恒『最新 漁業技術一般』成山堂書店、2000年。
田辺悟『網(ものと人間の文化史 106)』法政大学出版局、2002年。