化学

化学における配位子の基礎と分類

化学における配位子の基礎と分類
無機化学や錯体化学における配位子の基礎知識、性質、単座や多座などの種類、主な具体例について詳しく解説します。

📌 主なポイント

  • 配位子は中心金属原子に電子対を提供して配位結合を形成する化学種である。
  • 配位原子としては窒素、リン、酸素、硫黄などが主に利用される。
  • 配位部位の数によって単座配位子や多座配位子に分類される。

配位子(はいし、英: ligand)とは、無機化学や錯体化学において、中心金属原子またはイオンに配位結合を形成する化学種(分子やイオン)のことを指します。生化学や薬理学の分野における「リガンド」とは異なる文脈で用いられることがあります。

性質

配位子は一般的に孤立電子対を持つ原子や基を有しており、この電子対を金属に提供することで配位結合を形成し、錯体を構成します。配位に関与する主な原子としては、窒素、リン、酸素、硫黄などが挙げられます。アミノ基、ホスフィノ基、カルボキシル基、チオール基などが具体的な配位基として知られています。また、一酸化炭素やカルベンのように炭素原子を配位元素とするものも存在します。

一酸化炭素やエチレンなどのように、π軌道の反結合性軌道を持つ配位子に対しては、金属のd電子から配位子側へ電子が供与される「逆供与」と呼ばれる現象が起きることが特徴です。

配位子の種類

配位子は、金属に配位する部位(配位原子)の数によって分類されます。

  • 単座配位子:配位部位を1か所のみ持つもの。水、アンモニア、ピリジン、ハロゲン化物イオン、一酸化炭素などが含まれます。
  • 多座配位子:2か所以上で同時に配位する能力を持つもの。2か所の「二座配位子」(エチレンジアミンやビピリジンなど)や、3か所以上の「三座以上の多座配位子」(エチレンジアミン四酢酸など)に分けられます。

多座配位子が形成する錯体は、キレーションによるエントロピー効果によって単座配位子の錯体よりも熱力学的に安定になる傾向があります。この性質は均一系触媒や不斉合成の分野などで広く応用されています。

エチレンジアミン四酢酸 (EDTA) が中心金属原子 (M) の配位子となっている図
エチレンジアミン四酢酸 (EDTA) が中心金属原子 (M) の配位子となっているところ 1分子のEDTAだけで6本の配位結合を形成している

主な配位子の一覧

化学においてよく見られる代表的な配位子の例を以下に示します。

名称英語名化学式
アクアaquaH2O単座
アンミンamineNH3単座
クロロ(クロリド)chloroCl−単座
シアニドcyanideCN−単座
エチレンジアミンethylenediamineH2NCH2CH2NH2二座
エチレンジアミン四酢酸ethylenediaminetetraacetateC10H12N2O8 (4-)六座
錯体および配位子の分子構造に関する補助画像
錯体および配位子の分子構造に関する補助画像

よくある質問

配位子とは何ですか?
中心金属原子やイオンに対して孤立電子対を提供し、配位結合を形成する分子やイオンの総称です。
単座配位子と多座配位子の違いは何ですか?
単座配位子は配位部位を1つだけ持つものであり、多座配位子は2つ以上の配位部位を持ち、同時に複数の結合を形成できるものです。
キレート効果とはどのようなものですか?
多座配位子が中心金属に配位することで錯体が熱力学的に安定化する現象を指し、エントロピーの増加などが寄与しています。

関連記事

錯体配位子場理論キレート配位高分子官能基

参考文献

日本化学会編『化学便覧 基礎編』丸善出版、基礎的な無機化学および錯体化学の文献に基づく。