気象学

気象における波状雲の特徴と発生メカニズム

気象における波状雲の特徴と発生メカニズム
国際雲図帳で定義される雲の変種「波状雲(ウンドゥラトゥス)」の発生メカニズム、大気波や山岳波との関係、関連する雲の種類について解説します。

📌 主なポイント

  • 波状雲のラテン語学術名はundulatus(ウンドゥラトゥス)であり、「波打っている」という意味を持つ。
  • 巻積雲、高積雲、層積雲など、さまざまな種類の雲に変種として現れる。
  • 発生の主な原因は重力波の一種である大気波であり、大気の安定層と湿潤層の境界を波が伝わることで形成される。

波状雲(はじょううん、なみじょううん、ラテン語学術名: undulatus、略号: un)とは、世界気象機関(WMO)の『国際雲図帳』において定義されている雲の変種の1つである。一様に水平に広がる層状の雲に波模様や波紋が現れたり、水平に並ぶ雲片の群れが列をなして波やうねりのような形状を形成するものを指す。別名として畝(うね)雲と呼ばれることもある。

現れる雲の種類と特徴

波状雲は、巻積雲、巻層雲、高積雲、高層雲、層積雲、層雲といったさまざまな基本形の雲に現れる。多くの場合において水平方向に整然とした波模様が見られ、複数の方向から波が現れて直交し、整然とした隊列のように並ぶこともある。ただし、層雲において波状雲が発生する事例は比較的稀である。また、ときどき波状雲と放射状雲の両方の特徴を併せ持つ雲が観測されることもある。

さまざまな方向に波模様が入った波状巻積雲
さまざまな方向に波模様が入った波状巻積雲
波状巻積雲
波状巻積雲
多数の波模様ができた高積雲
多数の波模様ができた高積雲
波状高積雲
波状高積雲
波状高層雲
波状高層雲
波状高層雲
波状高層雲
波状層積雲
波状層積雲
波状層積雲(ケルビン・ヘルムホルツ不安定波によるもの)
波状層積雲(ケルビン・ヘルムホルツ不安定波によるもの)

語源

学術名の「undulatus」は、ラテン語で「波打っている」を意味する言葉である。これは波を表す「unda」に指小辞が付いた「undula」から派生した名称である。

発生メカニズム

波状雲の波模様が形成される主な原因は、重力波の一種である大気波だと考えられている。大気の安定した層の下部に湿潤層が存在する場合、両層の境界部に波が発生しやすくなり、その波が境界面を伝わっていく。水分が凝結して雲が生じる層へこの波が伝わると、波頭(波の峰)の部分に雲が形成される仕組みになっている。大気波には多様な波長が存在する。

気象衛星画像に捉えられるような、幅広く大規模な波状雲は、山脈などの地形的障害物に直交する風の風下に、山脈と平行な方向を持つ雲の列として現れることが多い。通常は、厚い安定層が存在する環境や、高度が高くなるにつれて風速が増すような状況下で発生しやすい。

インド洋上空の波状雲の衛星写真
インド洋上空の波状雲の衛星写真
悪天候の中の巨大な波状雲
悪天候の中の巨大な波状雲

類似する雲の形態

波状雲は放射状雲と形が似ている場合があるが、基本となる雲類が一部異なる。また、類似する副変種(部分的な特徴を持つ雲)としては、雲底にうねり模様が現れるアスペリタス(asperitas)や、雲の上面に砕けた波のような模様が現れるフルクトゥス(fluctus)などが挙げられる。

アスペリタス波状雲(荒底雲)
アスペリタス波状雲(荒底雲)

よくある質問

波状雲とはどのような雲ですか?
一様に広がる層状の雲に波模様や波紋が現れたり、雲片の群れが列をなしてうねりのような形をつくったりする雲の変種です。
波状雲はどのようなメカニズムで発生しますか?
大気の安定した層の下にある湿潤層の境界を大気波(重力波)が伝わり、水分が凝結する波頭の部分に雲が生じることで発生します。
波状雲は地震の前兆として現れることがありますか?
科学的な気象学においては、波状雲は通常の気象条件や大気波によって説明される雲であり、地震の前兆(地震雲)として発生するものではないとされています。

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巻積雲高積雲層積雲国際雲図帳重力波 (流体力学)

参考文献

  • 田中達也、『雲・空』、山と溪谷社、2001年。
  • 世界気象機関(WMO) 『International Cloud Atlas(国際雲図帳)』、2017年。
  • 荒木健太郎「雲は地震の前兆になるのか」『なゐふる』第117号、日本地震学会、2019年。
  • Storm Dunlop 『オックスフォード気象辞典』、朝倉書店、2005年。