美術

版画の技法と分類

版画の技法と分類
版画の定義、凸版・凹版・平版・孔版の4つの主要技法、およびそれぞれの特徴について解説します。

📌 主なポイント

  • 版画は主に凸版、凹版、平版、孔版の4つの技法に分類される。
  • 凹版画の製版には、直接溝を彫る直接法と、酸で腐食させる間接法がある。
  • リトグラフ(平版画)は、油と水の反発作用を利用して印刷を行う。
  • デジタル版画は、現代における新たな版画表現の一つである。

版画(はんが)とは、彫刻や細工を施した「版」を作成し、インクを転写することで複数枚の絵画を製作する技法、あるいはその技法によって製作された作品を指します。版画は、インクが乗る版面の仕組みに基づき、大きく4つのカテゴリーに分類されます。

版画の主要な4分類

版画は、版のどの部分にインクを付着させるかによって、以下の4つに大別されます。

  • 凸版画(とっぱんが):版の出っ張った部分にインクを乗せて転写する技法。木版画やリノカットが代表的です。
  • 凹版画(おうはんが):版の溝(凹部)にインクを詰め、圧力をかけて紙に転写する技法。銅版画が主流です。
  • 平版画(へいはんが):版面を平らに保ち、油と水の反発作用を利用してインクを付着させる技法。リトグラフがこれに該当します。
  • 孔版画(こうはんが):版の穴を通してインクを押し出す技法。シルクスクリーンなどが含まれます。

凸版画

凸版画は、版の凸部にインクを乗せ、バレンやプレス機で紙に押し付けて刷る技法です。版材には加工しやすい木材やゴム、リノリウムなどが用いられます。日本の浮世絵は、木材の板目を利用した多版多色木版画の代表例です。

凹版画

凹版画は、版に刻まれた溝にインクを詰め、余分なインクを拭き取った後にプレス機で紙に転写します。製版方法には、直接溝を彫る「直接法」と、酸による腐食を利用する「間接法」があります。

直接法

ビュランで溝を彫るエングレービングや、ニードルで版に傷をつけて描くドライポイントがあります。また、版全体に細かい目立てを施し、削ることで階調を表現するメゾチントも直接法の一種です。

間接法

防食剤を塗った版をニードルで描き、酸で腐食させるエッチングや、松脂の粉末を用いて面で表現するアクアチントが知られています。

平版画(リトグラフ)

リトグラフは、油と水の反発を利用した技法です。石版やアルミ板に油性の描画材で図柄を描き、薬品処理を施します。印刷時には版を常に湿らせる必要があり、水で濡らした版にインクを乗せることで、油分のある描画部分にのみインクが付着します。

孔版画

孔版画は、スクリーン(網目状のシート)の穴を通してインクを紙に押し出す技法です。現代ではシルクスクリーンやスクリーン・プリンティングと呼ばれます。製版には、切り抜いた型紙を用いる方法や、感光乳剤を利用する写真製版法などがあります。

デジタル版画

近年では、デジタル技術を用いて製作される「デジタル版画」も存在します。これは従来の物理的な版を用いる技法とは異なりますが、現代の版画表現の一形態として扱われています。

よくある質問

版画の主な4つの分類とは何ですか?
凸版画、凹版画、平版画、孔版画の4つです。それぞれインクを付着させる版の仕組みが異なります。
エッチングとエングレービングの違いは何ですか?
エングレービングは道具で直接版を彫る直接法ですが、エッチングは防食剤を塗った版を酸で腐食させる間接法である点が異なります。
リトグラフで版を水で濡らすのはなぜですか?
油と水の反発作用を利用しているためです。版を濡らすことで、インクを乗せたくない部分(親水性の部分)にインクが付着するのを防ぐ必要があります。

関連記事

浮世絵リトグラフシルクスクリーン銅版画木版画

参考文献

  • 町田市立国際版画美術館編『版画の技法と表現』1987年。
  • 島田康寛『版画の技法』1990年。
  • グループ・ギャラリー編『版画の基礎知識』1990年。
  • 品川区「O美術館でデジタル版画展2021を開催中」(2021年8月7日)。
  • 藤城清治美術館「藤城清治美術館監修オリジナルジクレー版画」。