建築

建築物や敷地の境界を守る構造物「塀」の構造と歴史

建築物や敷地の境界を守る構造物「塀」の構造と歴史
家や敷地の境界に設置される塀の種類、材料による分類、日本と欧州における歴史的背景、法令による規定について解説します。

📌 主なポイント

  • 塀は、家や敷地などの境界に設置され、区画、目隠し、防火、侵入防止などの目的を持つ工作物である。
  • 構造や材料により、土塀、石塀、板塀、煉瓦塀、コンクリートブロック塀、鉄筋コンクリート塀などに分類される。
  • コンクリートブロック塀や組積造の塀には、地震時の倒壊を防ぐため建築基準法等による詳細な規定が存在する。

塀(へい、英: wall または fence)とは、家屋や敷地などの境界に設置される囲いであり、区画、目隠し、防火、侵入防止などの目的で設けられる工作物や障壁を指します。見通しが利かない連続性のある壁を指すのが一般的であり、外部の見通しが可能な生け垣などの「垣」とは区別されます。

日本三塀の一つ、 西宮神社 の大練塀
日本三塀の一つ、 西宮神社 の大練塀

材料と工法による分類

塀は、使用される材料や技術的基盤によっていくつかの種類に分類されます。伝統的な土木技術に基づくものから、造園技術や西洋から導入された技術まで多岐にわたります。

  • 土塀:塗り塀や築地塀など、形態も名称も多様な代表的な塀です。佐賀県有田町の「トンバイ塀」のように、耐火煉瓦や不要となった陶石を赤土に混ぜて固めたものもあります。
  • 石塀地場の石材を用いた伝統的な構造物で、石の性質に由来する地域固有の技術が見られます。大谷石などがその例です。
  • 板塀:木材を用いた塀であり、土木技術を基盤とする土塀や石塀に対し、竹垣や生垣などとともに造園技術を技術基盤としています。
  • 煉瓦塀・コンクリートブロック(CB)塀:煉瓦塀は西洋起源の塀であり、明治以降にレンガの組積造技術が日本へ導入されました。これを発展させたコンクリートブロック塀は、鉄筋やモルタルで一体化させて構築します。
  • 鉄筋コンクリート(RC)塀および組立塀:現場打ちのほか、工場で製造されたプレキャストコンクリート(PCa)を用いた組立塀(万年塀など)が存在します。
ポーランド ルブシュ県 に残る石積みの古い塀
ポーランド ルブシュ県 に残る石積みの古い塀
板塀(ウッドフェンス)。構成には各種あるが日本ではこれと同様の「千鳥」と呼ばれるものが最も一般的。
板塀(ウッドフェンス)。構成には各種あるが日本ではこれと同様の「千鳥」と呼ばれるものが最も一般的。
日本の一般的なブロック塀
日本の一般的なブロック塀
鉄筋コンクリート組立塀
鉄筋コンクリート組立塀

日本と欧州における歴史的背景

日本においては、建築物の格式や用途に応じて様々な形状の塀が発達しました。寺院や廟などに採用される唐破風の屋根を持つ「唐塀」や、上部に連子をもつ神社の「透塀」などが知られています。

一方、欧州においては、イギリスの畑地や牧草地などで低い自然石を用いた「dry-stone wall」と呼ばれる構造物が設置されました。これは18世紀の農地改革の際、土地を分割して囲い込む必要性から生じたものであり、ヒツジなどの家畜が風雨を避けたり崖や雨溝への転落を防ぐ役割も果たしていました。

法規制と安全性の課題

日本の建築物における塀、特に補強コンクリートブロック造や組積造(石・煉瓦等)の塀には、高さ、厚さ、基礎の深さ、鉄筋の配置、控え壁の間隔などについて法令による規定が設けられています。

金沢工業大学 と民間企業との共同開発を行った「 塀のねっこ 」。耐震振動試験を国内では唯一実施しているプレキャストコンクリート塀製品。
金沢工業大学 と民間企業との共同開発を行った「 塀のねっこ 」。耐震振動試験を国内では唯一実施しているプレキャストコンクリート塀製品。

高度経済成長期以降に多く設置されたコンクリートブロック塀は、地震時の倒壊や防犯上の見通しの悪さが問題視されてきました。近年では、こうした従来型ブロック塀の脆弱性を克服するため、プレキャストコンクリート技術を用いた「塀のねっこ」や、軽量なパネル構法を採用した木質壁の「FIT工法」など、新たな耐震エクステリア技術の開発が進められています。

岐阜大学 農学部と民間企業との共同開発で可能となったFit Wall。「FIT工法」として 特許 を取得。
岐阜大学 農学部と民間企業との共同開発で可能となったFit Wall。「FIT工法」として 特許 を取得。
伝統的な日本家屋に新設された新素材も使用した塀
伝統的な日本家屋に新設された新素材も使用した塀

よくある質問

塀と垣の違いは何ですか?
垣は生け垣など外部の見通しが可能なものを指し、塀は見通しが利かない連続性のある壁を指します。
コンクリートブロック塀に法的な規制はありますか?
はい。高さ、厚さ、基礎の根入れ深さ、鉄筋の配置、控え壁の間隔などについて法令による細かい規定が定められています。
欧州のdry-stone wallは何のために作られましたか?
18世紀の農地改革の際に土地を分割して囲い込むため作られ、家畜が風雨を避けたり転落したりするのを防ぐ役割もありました。

関連記事

垣根塀 (城郭)建築基準法

参考文献

  1. コトバンク「塀」
  2. 西村亮彦・曽根直幸・栗原正夫・木村優介「わが国における塀・垣類に係る伝統的工法の地域的な特徴に関する研究 土塀・石塀」、土木史講演研究集 Vol.35 2015年土木学会
  3. 日本工業規格 JIS A 5409-1993 鉄筋コンクリート組立塀構成材
  4. 三谷康之「英語英文学の背景:英国の田園」『成城文藝』第110号、成城大学文芸学部
  5. 国土交通省 - 建築物の塀(ブロック塀や組積造)の安全点検等について
  6. 大林株式会社 - 耐震エクステリア開発の歩み