気象における平年値の仕組みと更新

📌 主なポイント
- ✓平年値は通常、気象要素の30年間の平均値として算出される。
- ✓統計期間の30年という基準は、世界気象機関(WMO)の技術規則に基づいている。
- ✓平年値およびそれに基づく階級表現は、原則として10年ごとに更新される。
平年値(へいねんち)とは、気温、降水量、風速などの気象要素における長期的な平均値であり、気候学や気象学においてその場所の気候的特徴を表す基準値として用いられる。

統計期間と更新のルール
気象観測の統計期間として30年間の平均を用いる規定は、1935年に国際気象機関の会議で勧告として発表され、のちに世界気象機関(WMO)の技術規則に引き継がれた。日本の気象庁においても、1921年から1950年の期間以降はこの基準を踏襲している。
多くの国や地域では、気候の変動や地球温暖化の傾向を適切に反映させるため、西暦の末尾が1となる年(10年ごと)に直前30年間の平均値へと更新を行ってきた。例えば、2011年から2020年までの期間には1981年から2010年までの30年間平均が使用されていた。WMOは2015年の規則改正により、加盟国に対して10年ごとの更新を求めるとともに、長期的な気候比較のために30年ごとの固定的な基準値との併用を定めている。
平年値の対象となる要素と計算方法
平年値として集計される対象は多岐にわたる。気温や降水量、風速、積雪量などの基本的な気象観測値のほか、初雪・終雪、初霜・終霜、桜の開花日や満開日、梅雨入り・梅雨明け、台風の発生・上陸・接近数、さらに生物の活動に関する季節変動も含まれる。
計算方法は通常、対象期間の総和を資料数で除した算術平均を用いるが、日別平年値の算出においては、統計の平滑化を図るために9日間の移動平均を3回繰り返す手法がとられる。また、うるう年の2月29日は除外して平滑平年値を求め、2月29日自体の値については前後の日である2月28日と3月1日の平滑平年値を算術平均して算出される。
階級表現
気象庁では、30年間の観測値を小さい順に並べて3分の1ずつに分割し、それぞれの階級に応じて「低い・少ない」「平年並」「高い・多い」という表現を用いて天候を評価している。たとえば、ある冬の平均気温がこの区分における下位3分の1に該当した場合には「寒冬」と表現される。この階級の区分値も、平年値の更新に合わせて10年ごとに見直される。
平年値の変動と要因
平年値は10年ごとの更新に伴い変化する。日本の気象庁の資料によると、1981年から2010年の平均値は1971年から2000年の平均値に比べて気温が0.2度から0.4度ほど高く、日本海側の多くの地点で降雪量が減少する傾向がみられた。2020年の更新においても気温の平均上昇が確認されている。これらの変動の要因としては、温室効果ガスの増加にともなう地球温暖化のほか、数十年周期の自然変動や都市化によるヒートアイランド現象などが挙げられている。
よくある質問
平年値の統計期間が30年間である理由は何ですか?
平年値はいつ更新されますか?
日別平年値の計算でうるう年の2月29日どのように処理されますか?
関連記事
参考文献
- 『ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典』、「平年値」
- 『世界大百科事典』第二版、「平年値」
- 『大辞林』第三版、「平年値」
- 気象庁「よくある質問集 気象観測・統計データについて 平年値の統計期間は30年間なのはなぜですか。なぜ10年ごとに更新されるのですか。」
- 環境展望台「世界気象機関、気候の基準値を、10年ごとに更新する平年値と長期比較用基準の二本立てとすることを決定」
- World Meteorological Organization, "Guide to Climatological Practices"
- 気象庁「表現に関する用語」および「気温、湿度」
- 気象庁「平年値の更新について」
- 気象庁「新平年値の特徴について」