物理化学

ヘルムホルツエネルギーの基礎と熱力学的性質

ヘルムホルツエネルギーの基礎と熱力学的性質
等温条件で仕事として取り出し可能なエネルギーを表す熱力学関数、ヘルムホルツエネルギーの定義や統計力学との関係について解説します。

📌 主なポイント

  • ヘルムホルツエネルギーは等温条件の下で仕事として取り出し可能なエネルギーを表す。
  • IUPACでは「ヘルムホルツエネルギー」という名称が推奨されている。
  • 統計力学においてはカノニカル分布の分配関数と密接に関連している。

ヘルムホルツエネルギー(英語: Helmholtz energy)は、等温条件の下で仕事として取り出し可能なエネルギーを表す示量性状態量である。

国際純正・応用化学連合(IUPAC)では、「自由」を付けずにヘルムホルツエネルギーとすることが推奨されている。記号にはFAが用いられることが多く、名称はヘルマン・フォン・ヘルムホルツに由来する。

定義

内部エネルギーU、熱力学温度をT、エントロピーをSとしたとき、ヘルムホルツエネルギーは次式で定義される。

F=U-TS
F = U - TS

完全な熱力学関数

熱力学温度T、体積V、物質量Nの関数として表されたヘルムホルツエネルギーF(T, V, N)は完全な熱力学関数となる。

F(T,V,N)=U(S(T,V,N),V,N)-T S(T,V,N)
F(T,V,N) = U(S(T,V,N),V,N) - T S(T,V,N)

ヘルムホルツエネルギーの各変数による偏微分は以下のように与えられる。

ヘルムホルツエネルギーの偏微分
偏微分の関係式

ここで、pは圧力、μiは成分iの化学ポテンシャルを表す。全微分は次のように表される。

dFの式
全微分 dF

系のスケール変換を考慮すると、次の関係が得られる。

F=-pV+sum N_i mu_i
スケール変換による関係

等温過程における仕事と平衡条件

温度Texの環境にある系が変化する過程において、熱力学第二法則により熱Qには上限が存在する。

Qの不等式
熱Qの上限

エネルギー保存則と組み合わせることで、系が外部に為す仕事Wにも上限が存在することが導かれる。

仕事Wの上限
仕事Wと熱・内部エネルギーの関係

等温条件下では温度が外囲と等しくなるため、ヘルムホルツエネルギーの変化量との間に次の関係が成り立つ。

delta Fの式
ヘルムホルツエネルギーの変化量
W<= -delta F
仕事の上限とヘルムホルツエネルギー

状態X0からX1への変化において、取り出し可能な最大仕事は次のように表される。

Wの範囲
仕事の範囲
Wmaxの定義
最大仕事の定義

等温等積条件で非膨張仕事を行わない場合、自発変化はヘルムホルツエネルギーが減少する方向へ進行し、平衡条件はヘルムホルツエネルギーが極小値をとることになる。

平衡条件の式
自発変化と平衡条件

統計力学との関係

統計力学において、ヘルムホルツエネルギーはカノニカル分布の規格化因子である分配関数Z(β)を用いて次のように表される。

統計力学におけるヘルムホルツエネルギー
統計力学的な表現

よくある質問

ヘルムホルツエネルギーの定義は何ですか?
内部エネルギーをU、熱力学温度をT、エントロピーをSとしたとき、F = U - TS で定義されます。
IUPACでの推奨名称は何ですか?
IUPACでは「自由」を付けずに「ヘルムホルツエネルギー」とすることが推奨されています。

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参考文献

  • IUPAC Gold Book
  • 田崎晴明『統計力学Ⅰ』培風館〈新物理学シリーズ〉、2008年。