無機化学

ヘキサクロリド白金(IV)酸の化学的特性と合成方法

ヘキサクロリド白金(IV)酸の化学的特性と合成方法
ヘキサクロリド白金(IV)酸の化学式、物理的性質、王水や塩素を用いた合成方法、白金化合物合成の出発物質としての役割について詳しく解説します。

📌 主なポイント

  • 化学式は H2[PtCl6] で表される白金(IV)錯体である。
  • 六水和物は赤褐色の固体であり、水に易溶である。
  • 各種白金化合物を合成する際の出発物質として利用される。

ヘキサクロリド白金(IV)酸(英: hexachloroplatinic(IV) acid)は、化学式 H2[PtCl6] で表される白金(IV)の錯体化合物です。白金の可溶性化合物の中でも比較的容易に利用できるもののひとつであり、各種白金化合物を合成する際の出発物質として広く用いられています。

物理的性質と構造

通常は六水和物 H2[PtCl6]·(H2O)6 として存在し、外観は赤褐色の固体です。モル質量は517.891 g/mol、密度は2.431 g/cm3(固体)であり、水には易溶性を示します。結晶構造は逆蛍石型であり、配位構造は八面体形をとります。

金属白金粉末と王水による反応式
金属白金粉末を温めた王水に溶かす際の主反応式
ニトロシル配位子が混入する副反応の化学式
ニトロシル配位子が混入する副反応の化学式
ニトロシル錯体が生成する反応式
ニトロシル錯体が生成する反応式

合成方法

金属白金粉末を温めた王水に溶解させることで合成されますが、この方法では白金原子と親和力の強いニトロシル(NO+配位子)が混入しやすいという特徴があります。溶解後に塩酸を加えて蒸発乾固を繰り返すことでニトロシルを追い出す操作が行われます。

塩酸の添加によるニトロシル塩化物の脱離反応式
塩酸の添加によるニトロシル塩化物の脱離反応式
塩化水素を用いたニトロシル基の除去反応式
塩化水素を用いたニトロシル基の除去反応式

完全にニトロシルを排除することが困難な場合があるため、白金粉末を温めた濃塩酸に懸濁させ、撹拌しながら塩素ガスを通じるか、過酸化水素水を滴下して発生する塩素により酸化溶解させる手法が純品を得る上で有効とされています。

よくある質問

ヘキサクロリド白金(IV)酸とはどのような物質ですか?
化学式H2[PtCl6]で表される白金(IV)の錯体であり、通常は赤褐色の六水和物として存在します。
どのような用途で使用されますか?
各種の白金化合物を合成するための出発物質として広く使用されています。
合成時の注意点は何ですか?
王水を用いて合成する際、ニトロシル配位子が混入しやすいため、塩酸の添加と蒸発乾固による除去、あるいは塩素ガスや過酸化水素を用いた酸化溶解が行われます。

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参考文献

日本化学会編 『新実験化学講座 無機化合物の合成III』 丸善、1977年