工学

油圧システム:原理と応用

油圧システム:原理と応用
液体を動力伝達媒体とする油圧システムの原理、特徴、構成要素、および産業分野での活用について解説します。

📌 主なポイント

  • 油圧システムはパスカルの原理に基づき、液体を介して力を伝達・増幅する。
  • 高出力密度であり、建設機械や航空機の制御など、大きな力を必要とする精密な作業に適している。
  • 近年はロボット分野において、耐衝撃性や高出力の利点から油圧アクチュエータの再評価が進んでいる。

油圧(ゆあつ、英: Hydraulic)とは、液体をエネルギーの伝達媒体として利用し、動力の伝達や制御を行うシステムのことです。主に鉱物油などの作動油が用いられ、パスカルの原理を応用することで、比較的小型の装置から大きな力を生み出すことが可能です。

原理

油圧駆動は、密閉された容器内の液体に圧力を加えると、その圧力が液体を通じて均等に伝わるという「パスカルの原理」に基づいています。油圧ポンプによって発生させた高圧の流体を配管を通じて送り出し、シリンダーや油圧モーター(アクチュエータ)に伝えることで、直線運動や回転運動といった仕事を行います。

パスカルの原理を示す図
二つのピストン内部の圧力は一定であり、面積の大きなピストンは面積比に応じた大きな力を発揮できる。

特徴と利点

油圧システムには、他の動力伝達方式と比較して以下のような特徴があります。

  • 高出力密度:小型のポンプで大きな力を発揮でき、空気圧機器よりも高圧での運用が可能です。
  • 制御性:出力や速度の調整が容易であり、繊細な操作が求められる航空機の舵面操作などにも適しています。
  • 衝撃吸収性:作動油の圧縮率が低いため、力をダイレクトに伝えつつ、ある程度の衝撃や振動を吸収する特性があります。
  • 防錆・潤滑:作動油自体に防錆や潤滑の効果があり、機器内部の摩耗を抑制します。
オープンセンター油圧回路の図
シンプルな「オープンセンター」油圧回路の構成。

産業における応用

油圧システムは、建設機械(油圧ショベル、フォークリフトなど)や産業用機械(プレス機、射出成形機)など、大きな力を必要とする分野で広く利用されています。また、航空機の舵面操作や水門の開閉など、信頼性が重視されるインフラや輸送機器にも不可欠な技術です。

油圧ショベルの作業機
油圧ショベルのシリンダーやホース類。

近年では、パワーエレクトロニクスの発達により電動式アクチュエータが普及しましたが、耐衝撃性や高出力が求められる多脚ロボットなどの分野では、精密な油圧制御技術が再び注目を集めています。また、機体の軽量化と配管の削減を目指し、ポンプとアクチュエータを一体化した電動油圧式(EHA)の実用化も進んでいます。

構成要素と作動油

システムは、油圧ポンプ、圧力制御弁、流量制御弁、方向制御弁、およびアクチュエータで構成されます。使用される作動油は、潤滑性、防錆性、劣化耐性などを考慮して選定されます。作動油は温度変化によって粘度が変化するため、適切な管理が求められます。

よくある質問

油圧と空気圧の主な違いは何ですか?
油圧は液体を使用するため高圧での運用が可能で大きな力を出せますが、空気圧は気体を使用するため応答性が高く、クリーンな環境に適しています。
なぜ油圧システムには戻り配管が必要なのですか?
油圧システムは閉回路で液体を循環させる必要があるため、アクチュエータで仕事をした後の油をタンクへ戻すための配管が不可欠です。
ロボットに油圧が再び使われるようになった理由は?
電動式と比較して耐衝撃性に優れ、高出力であるという油圧の特性が、複雑な地形を歩行する多脚ロボットなどの要求性能と合致したためです。

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参考文献

  • 日経クロステック「油圧復活、耐衝撃性でモーターに逆襲 川崎重工・ブリヂストンがロボットに」(2020年6月1日)
  • 玄相昊「油圧による柔軟で機動性の高い多脚ロボットの実現」『日本ロボット学会誌』(2019年)
  • 鈴森康一「タフロボット用油圧アクチュエータ」『日本ロボット学会誌』(2019年)
  • 李湧権「電動モータと油圧システムの競演から協演へ」『電気学会誌』(2016年)
  • 東京大学「電動航空機におけるアクチュエータ技術」(2020年)