無機化学

水素化物

水素化物
水素化物(ハイドライド)の定義、分類、および化学的性質について解説します。イオン性、共有結合性、金属的性質を持つ水素化物の特徴を網羅しています。

📌 主なポイント

  • 水素化物は、結合様式によりイオン性、共有結合性、金属水素化物の3つに大別される。
  • イオン性水素化物は、金属陽イオンと水素化物イオン(H⁻)から構成される。
  • 金属水素化物の一部は、水素を効率的に貯蔵できる性質を持ち、水素吸蔵合金として利用される。

水素化物(すいそかぶつ、英: hydride)とは、水素原子が他の元素と結合して形成される化合物の総称です。化学の分野ではハイドライドとも呼ばれます。広義には水素を含むあらゆる化合物を指す場合がありますが、狭義には水素と他の元素から構成される二元化合物を指します。また、化学反応において水素と化合させるプロセスを水素化と呼びます。

分類

水素化物は、その結合様式や物理的性質に基づいて、主に以下の3つに分類されます。

イオン性水素化物(塩類似水素化物)

アルカリ金属やアルカリ土類金属と水素が結合して形成される化合物です。これらは金属陽イオンと水素化物イオン(H⁻)からなるイオン結晶であり、一般に白色の固体として存在します。溶融塩の電気分解を行うと、陽極から水素ガスが発生することから、水素が陰イオンとして存在していることが確認できます。

水素化物イオンの電気分解反応式
水素化物イオンの電気分解反応式

共有結合性水素化物(分子状水素化物)

主に非金属元素と水素が共有結合を形成する化合物です。分子内の水素原子の状態により性質が異なります。水素原子が電気的に中性な場合はファンデルワールス力のみが働くため低沸点となりますが、双極子が生じる場合はプロトン性架橋により沸点や融点が高くなります。また、ジボラン(B₂H₆)のように反応性が極めて高いものも存在します。

ホスフィンの分子構造
ホスフィン(PH₃)の分子構造
ジボランの分子構造
ジボラン(B₂H₆)の分子構造

金属水素化物(金属類似水素化物)

特定の遷移金属が水素と形成する化合物です。金属光沢や高い電気伝導性を持つことが特徴で、これは自由電子の存在によるものと考えられています。水素吸蔵合金として知られる物質群が含まれており、水素の貯蔵技術への応用が研究されています。

水素化チタンの電子構造モデル
水素化チタンの電子構造モデル

よくある質問

水素化物と水素化の違いは何ですか?
水素化物は水素と他の元素が結合した「物質」そのものを指し、水素化は化学反応によって水素を付加させる「プロセス」を指します。
金属水素化物が電気伝導性を持つのはなぜですか?
金属水素化物の多くは、結晶構造内に自由電子が存在するため、金属光沢や高い電気伝導性を示すと考えられています。
水素吸蔵合金とは何ですか?
水素を効率的に吸収・貯蔵し、加熱などの操作により再び水素ガスとして放出できる性質を持つ金属水素化物の一種です。

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参考文献

レイナーキャナム無機化学, 東京化学同人 (2009年3月19日)