氷Ic相:立方晶系氷の構造と特性

📌 主なポイント
- ✓氷Ic相は、酸素原子がダイヤモンド構造に配列する立方晶系の氷の多形である。
- ✓1943年にハンス・ケーニヒによって初めて記述された。
- ✓2020年、水素ハイドレートや氷XVIIを用いることで、積層不整のない純粋な氷Ic相の合成が成功した。
氷Ic相(Ice Ic)は、氷の準安定状態である立方晶系結晶構造を持つ氷の多形です。1943年にハンス・ケーニヒによって初めてその存在が確認され、記述されました。氷Ic相の酸素原子はダイヤモンド構造と同様の配列をとっており、六方晶系である氷Ih相と密度や格子定数が非常に近接しているという特徴があります。

形成と安定性
氷Ic相は、過冷却された水滴から形成されるほか、アモルファス氷や高圧相である氷II、氷III、氷Vからの転移によっても生成されることが報告されています。冷却過程では-143℃から-53℃の温度域で形成され、加熱すると-33℃付近で安定な氷Ih相へと転移します。また、上層大気中にも存在すると考えられており、太陽や月を中心とした28度付近のハロ(Scheinerのハロ)の発生に関与しているという説があります。
積層不整と純粋な氷Ic相の合成
長年にわたり、完全な立方晶構造を持つ氷Ic相の合成は困難であり、従来の実験手法で作られたものは積層不整を含む「氷Isd相(積層不整のある氷I相)」であると指摘されてきました。しかし、近年の研究により、積層不整のない純粋な氷Ic相の合成が報告されています。
2020年、小松らによる研究では、C2水素ハイドレートから水素分子を脱離させる手法により、積層不整のない氷Ic相の作成に成功しました。同年にdel Rossoらも、氷XVII相を常圧下で加熱することで同様の純粋な氷Ic相を得る手法を報告しています。Tonauerらによる示差走査熱量測定では、氷XVIIから得られた氷Icが氷Ihへ転移する際のエントロピー差が-37.3 ± 2.3 J mol-1と見積もられました。ただし、合成手法によって氷Ihへの転移温度に差異が見られることから、構造的な詳細については現在も研究が続けられています。
よくある質問
氷Ic相と氷Ih相の違いは何ですか?
積層不整のない氷Ic相はどのように作られますか?
氷Ic相は自然界に存在しますか?
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参考文献
- Konig, H. (1943). "Eine kubische Eismodifikation". Z. Kristallogr. 105 (1): 279-286.
- Komatsu et al. (2020). "Ice Ic without stacking disorder by evacuating hydrogen from hydrogen hydrate". Nature Communications 11 (1): 2-4.
- del Rosso et al. (2020). "Cubic ice Ic without stacking defects obtained from ice XVII". Nature Materials 19 (6): 663-668.
- Tonauer et al. (2023). "Enthalpy Change from Pure Cubic Ice Ic to Hexagonal Ice Ih". The Journal of Physical Chemistry Letters 14 (21): 5055–5060.