物理化学
氷II:高圧下で形成される水素秩序相の氷
氷IIは、高圧条件下で生成される氷の結晶多形のひとつです。水素分子が完全に秩序化された構造を持ち、その物理的特性や歴史的発見について解説します。
📌 主なポイント
- ✓氷IIは、氷Ihを約198Kで300MPaに加圧することで形成される高圧相である。
- ✓水素分子が完全に秩序化された構造を持つ「水素秩序相」である。
- ✓1900年にグスタフ・ハインリッヒ・タンマンによって初めて発見・記録された。
- ✓空間群はR-3に属し、酸素骨格に対して水素が規則正しく配置されている。
氷II(Ice II)は、高圧条件下で生成される氷の結晶多形(相)のひとつです。通常の氷(氷Ih)とは異なる結晶構造を持ち、特定の温度と圧力の範囲で安定して存在します。
生成条件
氷IIは、主に氷Ihを約198Kの温度で300MPa程度に加圧することで形成されます。また、氷Vを除圧する過程でも得られることが知られています。加熱を行うと、氷IIIへと転移する性質を持っています。
歴史的背景
氷IIの存在は、1900年に物理学者のグスタフ・ハインリッヒ・タンマンによって初めて記述されました。タンマンは高圧低温下での氷の挙動を研究する過程で、氷IIIを生成した後にさらなる圧縮を行うことで、より密度の高い氷IIの状態を観測しました。その後、1912年にはパーシー・ブリッジマンが氷IIと氷IIIの体積差に関する詳細な実験を行い、相平衡の特性を明らかにしました。
結晶構造
氷IIの結晶構造は、1964年にB. KambらによってX線回折を用いて報告され、1971年には単結晶中性子回折実験によってより詳細なモデルが確立されました。空間群はR-3に分類され、110K・常圧における格子定数はa = 7.78 Å、α = 113.1°です。
氷IIの最大の特徴は、水素分子が完全に配向秩序化している点にあります。これは水素秩序相として知られ、既知の氷の多形の中でも、同一の酸素骨格を持つ水素無秩序相が発見されていない唯一の相です。
よくある質問
氷IIはどのような条件下で生成されますか?
氷Ihを約198Kの温度で300MPaに加圧するか、氷Vを除圧することで生成されます。
氷IIの結晶構造の特徴は何ですか?
氷IIは水素分子が完全に配向秩序化した構造を持っており、水素秩序相として分類されます。
氷IIを加熱するとどうなりますか?
氷IIを加熱すると、氷IIIへと転移します。
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参考文献
- Chaplin, Martin (2014). "Ice-two structure". Water Structure and Science. London South Bank University.
- Hobbs, Peter V. (2010). "Ice Physics". Oxford University Press. pp. 61-70.
- Kamb, B. (1964). "Ice. II. A proton-ordered form of ice". Acta Crystallographica, 17(11), 1437–1449.
- Kamb, B., et al. (1971). "Ordered Proton Configuration in Ice II, from Single-Crystal Neutron Diffraction". The Journal of Chemical Physics, 55(4), 1934–1945.