結晶学
氷IIIの物理的特性と相転移

高圧下で生成される氷の多形である氷IIIの結晶構造、生成条件、および氷IXへの相転移について解説します。
📌 主なポイント
- ✓氷IIIは1912年にパーシー・ブリッジマンによって報告された高圧氷の多形である。
- ✓結晶構造は空間群P41212に属する正方晶系である。
- ✓約160 K以下に冷却することで、水素秩序化した氷IXへ相転移する。
氷III(こおりさん、ice III)は、高圧条件下で生成される水の結晶多形のひとつです。1912年、パーシー・ブリッジマンによる高圧力下での水の体積測定実験によって初めて報告されました。

生成条件
氷IIIは、液体の水を約0.25 GPaの圧力下で250 Kまで冷却することで結晶化させることが可能です。また、実験的な条件下では、氷Ih(通常の氷)を加圧する際、加圧速度が速い場合などに準安定相として氷IIIが生成されることが知られています。
結晶構造
氷IIIの結晶構造は空間群P41212に属し、正方晶の単位格子(a=6.80 Å, c=6.86 Å)として記述されます。中性子回折を用いた構造解析により、氷IIIは部分的に配向秩序化した構造を持つことが明らかにされています。
氷IXへの相転移
氷IIIを約160 K以下に冷却すると、水素秩序化した相である氷IXへと相転移します。氷IXも氷IIIと同様に空間群P41212を持ち、ほぼ完全に水素秩序化した構造をとります。無秩序相と秩序相が同一の空間群を持つ例として、結晶学的に注目されています。
よくある質問
氷IIIはどのように生成されますか?
液体の水を約0.25 GPaの圧力下で250 Kまで冷却することで生成されます。また、氷Ihの加圧速度が速い場合にも準安定相として現れます。
氷IIIと氷IXの結晶構造の違いは何ですか?
両者は同じ空間群(P41212)を持ちますが、氷IIIは部分的に配向秩序化した構造であるのに対し、氷IXはほぼ完全に水素秩序化した構造を持つ点が異なります。
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参考文献
- Bridgman, P. (1912). "Water, in the Liquid and Five Solid Forms, under Pressure".
- Bauer, M., et al. (2008). "Compression-rate dependence of the phase transition from hexagonal ice to ice II and/or ice III". Physical Review B.
- Lobban, C., et al. (2000). "The structure and ordering of ices III and V". The Journal of Chemical Physics.
- Whalley, E., et al. (1968). "Ice IX: An Antiferroelectric Phase Related to Ice III". The Journal of Chemical Physics.