氷河学

棚氷(アイスシェルフ)の概要と形成メカニズム

棚氷(アイスシェルフ)の概要と形成メカニズム
棚氷(アイスシェルフ)の定義、形成過程、南極や北極における分布、および気候変動が棚氷の安定性に与える影響について解説します。

📌 主なポイント

  • 棚氷は陸上の氷河が海へ押し出されて形成される、海上に浮かぶ巨大な氷の塊である。
  • 海氷と比較して非常に厚く、数十メートルから数百メートルに達することがある。
  • 棚氷は背後の氷河の流出を抑制する役割を担っており、その消失は氷河の流出加速につながる。
  • 地球上の棚氷の大部分は南極大陸周辺に集中している。

棚氷(たなごおり、英: ice shelf)とは、陸上の氷河や氷床が海へと流れ出し、陸地と連結したまま海上に浮かんでいる巨大な氷の塊を指します。氷棚(ひょうほう)とも呼ばれます。その上面は一般的に平坦な形状をしており、厚さは数十メートルから数百メートルに達することもあります。

棚氷の概念図
棚氷の構造を示す概念図

形成と特徴

棚氷は海氷とは異なり、陸上で降雪が圧縮されて形成された氷河が海へ押し出されることで生まれます。海氷が海水そのものの凍結によって形成され、通常数メートル程度の厚さであるのに対し、棚氷は陸上由来の氷であるため、非常に厚いのが特徴です。また、陸上の氷と連結している点で氷山とも区別されます。

棚氷の先端部では、氷が沖合いへ移動する過程で、波浪や融解の影響を受けて氷塊が分離する「カービング」という現象が発生します。これにより、テーブル型氷山が生成されます。

南極の主要な棚氷の分布と面積
南極における主要な棚氷の分布と面積の比較

分布

棚氷は主に南極大陸周辺に広く分布しており、地球上の棚氷の大部分を占めています。特にロス棚氷は世界最大規模であり、次いでフィルヒナー・ロンネ棚氷やアメリー棚氷などが続きます。北極圏においても、カナダのエルズミーア島周辺などに小規模な棚氷が存在します。

ロス棚氷の風景
ロス棚氷の広大な景観

気候変動と安定性

棚氷は、海洋からの熱による底面融解や、カービングによって消失します。棚氷は背後の氷河の流出をせき止める「防波堤」のような役割を果たしており、棚氷が崩壊すると、背後の氷河が海へ流出する速度が加速する傾向があります。近年、地球温暖化の影響により、南極のウィルキンス棚氷などが大陸から分離する現象が観測されており、その安定性が懸念されています。

よくある質問

棚氷と海氷の違いは何ですか?
棚氷は陸上の氷河が海に押し出されたものであり、海氷は海水が凍結してできたものです。棚氷の方が圧倒的に厚く、形成過程も異なります。
なぜ棚氷が重要視されているのですか?
棚氷は背後の氷河の流出をせき止める役割を果たしているため、棚氷の崩壊は海面水位の上昇に直結する氷河の流出加速を招く可能性があるからです。
棚氷はどこで見られますか?
主に南極大陸の沿岸部で見られます。また、カナダ北部やグリーンランドなどの極地にも存在します。

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参考文献

  • AFPBB News「南極のウィルキンス棚氷、氷山への分解が進行 温暖化の影響」2009年4月29日