氷VI:高圧下で形成される氷の結晶構造と性質

📌 主なポイント
- ✓氷VIは1912年にパーシー・ブリッジマンによって発見された高圧氷の多形である。
- ✓結晶構造は正方晶系(空間群P42/nmc)であり、水素無秩序相である。
- ✓氷XVおよび氷XIXは、氷VIを冷却することで得られる水素秩序相として研究されている。
氷VI(アイス・シックス)は、高圧環境下で生成される水(氷)の結晶多形の一つです。室温において約1 GPa以上の圧力を加えることで水から結晶化します。1912年に物理学者のパーシー・ブリッジマンによって初めて発見されました。
相関係と安定領域
氷VIは、室温条件下では約1 GPa以上の圧力で安定して存在します。より低い圧力領域では氷IIや氷Vが、より高い圧力領域では氷VIIや氷VIIIが安定相となります。ブリッジマンによる初期の測定およびその後のダイヤモンドアンビルセルを用いた研究により、水・氷VI・氷VIIの三重点は、約2.2 GPa、81.6°C(354.8 K)付近に位置することが確認されています。
結晶構造
氷VIは正方晶系に属し、空間群はP42/nmcです。この構造は、二つの独立した水素結合ネットワークが相互に貫入しているという特徴を持ちます。中性子回折実験により、氷VIは水素原子の位置が統計的に無秩序な「水素無秩序相」であることが明らかにされています。各酸素サイトを取り囲む4つの水素サイトの占有率はそれぞれ50%です。
関連する低温相:氷XVと氷XIX
氷VIを冷却することで、水素原子の配置が秩序化された低温相が生成されます。これらは氷VIの水素秩序相として研究されています。
氷XV
2009年に報告された氷XVは、氷VIの水素秩序相です。塩化水素(HCl)をドープした氷VIを冷却することで得られます。氷VIから氷XVへの相転移は、c軸の伸長を伴うため、高圧下では非常に緩慢に進行します。実験的には、完全に秩序化した氷XVを得ることは困難であり、水素秩序度の向上には徐冷などの手法が用いられます。
氷XIX
氷XIXは、氷VIに関連するもう一つの低温相です。2018年に報告され、当初はβ-XVと呼ばれていました。氷XVとは異なる水素配置を持つ相として研究が進められていますが、その本質については議論が続いています。一部の研究グループは、氷XIXを氷VIの「Deep Glassy State(深部ガラス状態)」であると主張しており、水素配置の秩序化だけでは説明できない挙動が指摘されています。2025年現在、これらの相の性質や相図上の位置づけについては、依然として科学的な論争の対象となっています。
天然ダイヤモンド中の包有物
分光学的データに基づき、天然ダイヤモンド中に氷VIが包有物として含まれている可能性が指摘されています。ただし、氷VIIのように結晶構造に基づいた確定的な同定には至っておらず、現時点では鉱物としては認定されていません。
よくある質問
氷VIはどのような条件下で生成されますか?
氷XVと氷VIの違いは何ですか?
氷XIXの正体は何ですか?
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参考文献
- Bridgman, P. W. (1912). "Water, in the Liquid and Five Solid Forms, under Pressure".
- Kamb, B. (1965). "Structure of Ice VI". Science.
- Salzmann, C. G., et al. (2009). "Ice XV: A New Thermodynamically Stable Phase of Ice". Physical Review Letters.
- Gasser, T. M., et al. (2018). "Experiments indicating a second hydrogen ordered phase of ice VI". Chemical Science.
- Yamane, R., et al. (2021). "Experimental evidence for the existence of a second partially-ordered phase of ice VI". Nature Communications.