氷VII:高圧下で安定する氷の結晶構造と性質

📌 主なポイント
- ✓氷VIIは、約2 GPa以上の高圧下で安定して存在する氷の結晶多形である。
- ✓2018年、ダイヤモンド中の包有物として天然の氷VIIが発見され、鉱物として認定された。
- ✓氷VIIIは氷VIIの水素秩序相であり、正方晶(I41/amd)の構造を持つ。
- ✓氷Xは、約60 GPa以上の高圧下で水素結合が対称化した状態の氷である。
氷VII(こおりなな、ice VII)は、高圧環境下において安定して存在する氷の結晶多形の一つです。パーシー・ブリッジマンによって発見され、およそ2 GPa以上の幅広い圧力領域で安定相として存在することが知られています。
結晶構造
氷VIIの結晶構造は、酸素副格子が体心立方(bcc)格子を形成していることが特徴です。1964年にKambらによってその存在が報告され、1984年にはKuhsらが高圧セルを用いた中性子粉末回折により、詳細な構造を明らかにしました。空間群はPn-3mであり、2.6 GPaにおける格子定数はa = 3.35 Åと報告されています。
鉱物としての氷VII
長年、地球深部の冷たい沈み込み帯などで氷VIIが存在する可能性が指摘されてきましたが、天然での確認は困難でした。しかし、2018年にTschaunerらによって、マントル遷移層から下部マントル由来のダイヤモンド中に氷VIIの包有物が発見されました。これは、ダイヤモンド生成時にトラップされた流体が、地表への上昇過程で冷却され結晶化したものと考えられており、国際鉱物学連合により鉱物として認定されました。
氷VIIIと水素の秩序化
氷VIIIは、氷VIIの水素秩序相であり、氷VIIを0°C以下に冷却することで得られます。1966年にWhalleyらによって誘電測定からその存在が見出されました。氷VIIIは立方晶ではなく正方晶(空間群I41/amd)であり、水素原子が完全に秩序化した構造を持っています。これは水素無秩序–秩序相のペアの中で、もっとも高い相転移温度を持つことが知られています。
氷Xへの転移
さらなる高圧下では、水素結合の対称化が起こり、氷Xへと転移します。これは分子内のO-H共有結合長と、隣接分子とのO...H水素結合長が等しくなる状態を指します。室温において、この転移は60 GPa付近で起こるとされています。氷VIIから氷Xへの過程については、中間状態の存在や転移の定義について現在も研究が進められており、動的に乱れた状態(氷VII')を経由するという説などが提唱されています。
よくある質問
氷VIIはどのような環境で存在しますか?
氷VIIと氷VIIIの違いは何ですか?
氷Xとはどのような状態ですか?
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参考文献
- Bridgman, P. W. (1937). The Phase Diagram of Water to 45,000 kg/cm2. The Journal of Chemical Physics, 5(12), 964–966.
- Kamb, B., & Davis, B. L. (1964). ICE VII, THE DENSEST FORM OF ICE. Proceedings of the National Academy of Sciences, 52(6), 1433–1439.
- Tschauner, O., et al. (2018). Ice-VII inclusions in diamonds: Evidence for aqueous fluid in Earth’s deep mantle. Science, 359(6380), 1136–1139.
- Kuhs, W. F., et al. (1984). Structure and hydrogen ordering in ices VI, VII, and VIII by neutron powder diffraction. The Journal of Chemical Physics, 81(8), 3612–3623.
- Komatsu, K., et al. (2024). Hydrogen bond symmetrisation in D2O ice observed by neutron diffraction. Nature Communications, 15(1).