高圧氷多形における氷VIIおよび関連相の特徴と結晶構造

📌 主なポイント
- ✓氷VIIはおよそ2 GPa以上の高圧領域で安定相として存在する水の結晶多形である。
- ✓酸素副格子がbcc格子をなし、1984年にKuhsらによって中性子粉末回折から詳細な結晶構造が報告された。
- ✓2018年にダイヤモンド中の包有物として天然の氷VIIが発見され、鉱物として認定された。
- ✓氷VIIを冷却することで得られる氷VIIIは水素秩序相であり、正方晶系の構造を持つ。
氷VII(こおりなな、ice VII)は、高圧環境下で生成される水の結晶多形のひとつである。およそ2 GPa以上の幅広い圧力領域において安定相として存在し、パーシー・ブリッジマンによってその存在が見出された。
結晶構造と物理的特性
氷VIIの結晶構造は、Kambらによって1964年に報告され、酸素副格子が体心立方格子(bcc格子)を形成していることが明らかにされた。1984年、Kuhsらが高圧セルを用いた中性子粉末回折により詳細な構造解析を行い、空間群がPn-3mであり、2.6 GPaにおける格子定数がa = 3.35 Åであることを報告した。酸素副格子が共通する構造を持ちつつ、冷却や加圧、加熱の過程を経ることで、氷VIIIや氷Xといった異なる多形へと相転移することが知られている。
鉱物としての天然での発見
地球深部の環境、例えば低温の沈み込み帯などにおいては固体の高圧氷が存在する可能性が以前から指摘されていた。2018年、Tschaunerらはマントル遷移層から下部マントル由来のダイヤモンド中に氷VIIの包有物を発見し、X線回折やラマン分光法により同定した。これにより、国際鉱物学連合(IMAA)によって氷VIIが鉱物として正式に認定された。
水素秩序相:氷VIII
氷VIIIは、氷VIIに対応する水素秩序相であり、氷VIIを冷却することによって得られる。Whalleyらによる誘電測定や、Kuhsらの中性子回折実験により、空間群がI41/amdである正方晶系に属し、水素原子が完全に秩序化した構造を持つことが確認されている。
水素結合の対称化:氷X
さらに高圧を加えた領域では、分子内のO-H共有結合長と隣接分子とのO...H水素結合長が等しくなる「水素結合の対称化」が生じ、これを氷Xと呼ぶ。室温における氷VIIから氷Xへの相転移圧力については、高圧その場分光測定などの研究により検討が進められており、多様な中間状態や圧力依存性に関する議論が行われている。
よくある質問
氷VIIとはどのような物質ですか?
氷VIIの結晶構造の特徴は何ですか?
氷VIIは自然界の地球内部に存在しますか?
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参考文献
- Bridgman, P. W. (1937). The Journal of Chemical Physics, 5(12), 964–966.
- Kamb, Barclay; Davis, Briant L. (1964). Proceedings of the National Academy of Sciences, 52(6), 1433–1439.
- Kuhs, W. F., et al. (1984). The Journal of Chemical Physics, 81(8), 3612–3623.
- Tschauner, O., et al. (2018). Science, 359(6380), 1136–1139.