物理化学

氷XII:高圧下で生成される準安定な氷の多形

氷XIIは、高圧条件下で液体の水やアモルファス氷から生成される準安定な氷の結晶構造です。その物理的特性や氷XIVとの関連について解説します。

📌 主なポイント

  • 氷XIIは、0.55 GPaの高圧下で液体の水を徐冷することで生成される準安定な氷の多形である。
  • 結晶構造は正方晶系(空間群 I-42d)であり、密度は1.4365 g/cm³(0.50 GPa, 260 K)である。
  • 氷XIVは、氷XIIを冷却することで生成される部分水素秩序相である。

氷XII(アイス・トゥエルブ)は、高圧条件下で生成される氷の結晶多形のひとつであり、準安定相として知られています。1998年にLobbanらによって、液体の水を0.55 GPaという高圧下で冷却するプロセスを通じて初めてその構造が報告されました。

結晶構造と物理的特性

中性子回折を用いた構造解析により、氷XIIは空間群 I-42d に属する正方晶系構造を持つことが明らかになっています(格子定数: a = 8.304 Å, c = 4.024 Å)。0.50 GPa、260 Kにおける密度は1.4365 g/cm³であり、これは氷V(1.4021 g/cm³)よりもわずかに高く、氷IVとほぼ同等の密度を有しています。

生成条件

氷XIIは、液体の水を制御された条件下で徐冷することで選択的に結晶化させることが可能です。また、150 K以下の低温で通常の氷(氷Ih)を加圧することによっても生成されます。この過程については、高密度アモルファス氷(HDA)を経由するという説が有力視されています。HDAを加熱する際、圧力や加熱速度を調整することで、氷XIIを選択的に得ることができます。

氷XIVとの関連

氷XIVは、氷XIIを冷却することで得られる部分水素秩序相です。2006年にSalzmannらによって報告されました。氷XIIから氷XIVへの転移は、水素原子の配置が秩序化するプロセスであり、冷却速度やアニーリング条件によってその秩序度が変化します。この転移は常圧では可逆的ではないことが示唆されていますが、近年の研究では、特定の冷却条件やアニーリング手法を用いることで、より高い水素秩序度を持つ氷XIVの作製が可能であることが報告されています。

よくある質問

氷XIIはどのようにして発見されましたか?
1998年にLobbanらによって、液体の水を0.55 GPaの高圧下で260 Kまで徐冷する実験過程で発見され、中性子回折により構造が特定されました。
氷XIIと氷XIVの違いは何ですか?
氷XIIは水素原子が不規則な配置をとる相ですが、氷XIVは氷XIIを冷却することで水素原子が部分的に秩序化された状態の相です。
氷XIIは常圧で安定ですか?
いいえ、氷XIIは準安定相であり、常圧下では安定して存在しません。

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参考文献

  • Lobban, C., Finney, J. L., & Kuhs, W. F. (1998). The structure of a new phase of ice. Nature, 391(6664), 268–270.
  • Salzmann, C. G., et al. (2006). The Preparation and Structures of Hydrogen Ordered Phases of Ice. Science, 311(5768), 1758–1761.
  • Kohl, I., Mayer, E., & Hallbrucker, A. (2001). Ice XII forms on compression of hexagonal ice at 77 K via high-density amorphous water. Physical Chemistry Chemical Physics, 3(4), 602–605.