氷XIIおよび氷XIV:高圧下で生成される水の多形に関する結晶構造と相転移
📌 主なポイント
- ✓氷XIIは1998年にLobbanらによって中性子回折を用いた構造解析から空間群 I-42d の正方晶系構造として報告された。
- ✓氷XIIの密度は、0.50 GPaおよび260 Kにおいて1.4365(1) g cm-3であり、氷Vよりわずかに大きく氷IVとほぼ同等である。
- ✓氷XIVは2006年にSalzmannらによって発見された、HClドープした氷XIIを冷却して得られる部分水素秩序相(空間群 P212121)である。
氷XII(こおりじゅうに、ice XII)は、高圧条件下において生成される水の結晶多形のひとつであり、熱力学的には準安定相として位置づけられる物質である。水には非常に多様な結晶構造が存在することが知られており、氷XIIはその中でも特定の圧力および温度領域において選択的な結晶化を示す。また、氷XIIを特定の条件下で冷却・処理することによって派生する氷XIV(こおりじゅうよん、ice XIV)についても研究が進められており、両者の相関関係や水素秩序化に関する知見が蓄積されている。
氷XIIの発見と結晶構造
1998年、C. Lobbanらの研究グループは、液体の水を0.55 GPaの圧力下で、2.5 K hour-1の速度で260 Kまで徐冷することにより、氷XIIを選択的に結晶化させることに成功した。中性子回折を用いた構造解析の結果、氷XIIは空間群 I-42d(格子定数 a = 8.304 Å, c = 4.024 Å)に属する正方晶系の結晶構造を持つことが明らかにされた。0.50 GPaおよび260 Kにおける密度は1.4365(1) g cm-3であり、これは氷V(1.4021(1) g cm-3)の密度をわずかに上回る一方で、氷IV(1.4361(1) g cm-3)とはほぼ同一の値を示している。
同受容期には、I-Ming Chouらのグループもダイヤモンドアンビルセルを用いた実験から、高圧下での液体の水の冷却によって新たな準安定相が生じることを報告していた。当初はラマン分光法による特徴づけにとどまり構造未決定であったため命名されていなかったが、2002年にオーストリアの研究グループによるラマンスペクトルの詳細な比較検討により、Chouらの観測した新相が氷XIIと同一であることが確認された。
生成経路と準安定性
氷XIIの生成経路は液体の水の冷却に限られず、固体状態からの相転移によっても生じることが確認されている。例えば、150 K以下の温度で通常の六方晶氷(氷Ih)を加圧することによっても生成される。このプロセスにおいては、高密度アモルファス氷(HDA)を経由するかどうかが議論されてきた。Kohlらは、氷Ihの圧縮によって氷XIIが生じる際にも、まずHDAが介在することを提案している。
さらに、高密度アモルファス氷(HDA)の加熱によっても氷XIIが結晶化することが知られている。特に0.81 GPaの圧力下では、加熱速度を速くすると氷XIIが選択的に生じる一方、加熱速度を遅くした場合には氷IVが結晶化するという、加熱速度に依存した結晶化挙動を示すことが報告されている。
氷XIV:部分水素秩序相の発見と特徴
氷XIVは、塩化水素(HCl)をドープした氷XIIを冷却することによって得られる、部分水素秩序相である。2006年にChristoph G. Salzmannらによって最初に報告され、提案された空間群は P212121 である。発見当初からラマン分光法の分析により、氷XIIから氷XIVへの相転移は常圧下では可逆的ではないことが示されていた。近年の研究では、冷却速度を極めて遅くすることで常圧下でも一定の水素秩序度を達成できることが示されている。
また、高圧下で冷却を行う場合においても、単なる徐冷ではなく、94 Kまで急冷したのちにその温度で長時間アニーリング(焼きなまし)処理を行うことで、より高度な水素秩序度を持つ氷XIVを作製できることが明らかにされている。
よくある質問
氷XIIとはどのような物質ですか?
氷XIIの結晶構造はどのような特徴を持っていますか?
氷XIVはどのようにして作製されますか?
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参考文献
- Lobban, C., Finney, J. L., & Kuhs, W. F. (1998). The structure of a new phase of ice. Nature, 391(6664), 268–270.
- Chou, I-Ming, et al. (1998). In Situ Observations of a High-Pressure Phase of H2O Ice. Science, 281(5378), 809–812.
- Salzmann, C. G., et al. (2002). The Raman Spectrum of Ice XII and Its Relation to that of a New “High-Pressure Phase of H 2 O Ice”. The Journal of Physical Chemistry B, 106(1), 1–6.
- Salzmann, C. G., et al. (2006). The Preparation and Structures of Hydrogen Ordered Phases of Ice. Science, 311(5768), 1758–1761.