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同一性の概念と哲学的・心理学的諸相
📌 主なポイント
- ✓同一性(identity)は、存在の本質や個体の同一性を指す多義的な概念である。
- ✓哲学史において、プラトンのイデア論やアリストテレスの形而上学などで深く考察されてきた。
- ✓心理学においては、自己の連続性や自我同一性(アイデンティティ)として扱われる。
同一性(どういつせい)とは、英語の「identity」の訳語であり、文脈によって多様な意味を持つ多義的な概念である。大きく分けると、「Aは何者であるのか」という定義や本質に関する問いと、「AとBは同一のものである」という対象の同一性をめぐる問いの二つに大別される。
哲学における同一性
西洋哲学において同一性は、存在を把握するための極めて重要な概念である。古代ギリシャのプラトンは、感覚によって捉えられる現象界の背後に、変化しない真の実体としてイデアを想定し、それが自己同一性の根拠であるとした。アリストテレスは、『形而上学』や『トピカ』において、個物としての実体や定義の本質について論じている。近代においては、スピノザが自己同一的な実体として神を位置づけ、論理学においては「AはAである」とする同一律が確立された。
心理学における自己同一性
心理学や精神医学の領域では、時や場所が変わっても自分は自分であるという意識や人格の連続性を自己同一性(アイデンティティ、ego identity)と呼ぶ。カール・ヤスパースは、能動性、単一性、同一性、自他の区別という自我の諸特性を挙げている。この同一性が損なわれる事例として、解離性同一性障害などが挙げられる。
論理学とその他の領域
論理学においては、「AはAである」という同一律が思考の基本的な形式とされる。また、法的文脈においては著作者人格権における同一性保持権など、特定の内容が変更されていないことを指す用語としても用いられている。
よくある質問
同一性とはどのような意味を持つ言葉ですか?
同一性は、主に「Aは何者なのか」という本質や定義に関する意味と、「AとBは同じである」という対象の同一性を指す意味を持つ多義的な言葉です。
哲学における同一性の起源は何ですか?
西洋哲学において同一性の概念は古代ギリシャに遡り、プラトンのイデア論やアリストテレスの形而上学などで探求されてきました。
心理学における自己同一性とは何ですか?
心理学における自己同一性(アイデンティティ)とは、時間や場所が変わっても自分は自分であるという確信や、人格の連続性を指します。
参考文献
- 飯田隆「同一性」『岩波 哲学・思想事典』岩波書店、1998年、ISBN 9784000800891
- 英語には「idem」に直接あたる語が無い。一方でドイツ語などにはある。(ラテン語の文法#指示代名詞の格変化 などを参照)
- Russell,The problems of philosophy, 1912:72,1997 edition. 髙村夏輝訳『哲学入門』ちくま学芸文庫, 90頁
- 「(全ての定義はそもそも分割可能ではあるにしても、)2つのものは、それぞれの本質について述べる定義の一方が、もう一方について我々に対し表現する別の定義から分割できないとき、1つのものとして呼ばれる。」-アリストテレス「形而上学」第4書、第4部(c)
- 「しかるに、それぞれの物自体およびその本質は、これまでの議論および、少なくとも一方の事物を知ることはその本質を知ることにほかならないことから、単なる偶然ではなくひとつの同一のものである。よって、両者がひとつのものに違いないということは明らかなのである。」-アリストテレス「形而上学」第7書、第6部
- 「もしある事物の定義がその事物の本質を指し示す表現であり、その事物について述べる際に含まれる(複数の)述語もまたそれぞれがその事物の本質のカテゴリー(アリストテレスは、「範疇論」において、述語の種類を実体・量・質・関係…などの10種類のカテゴリーに分類し、どの個物もひとつの分類に属さねばならないものとした)の中で叙述される唯一のものであるならば、かつそれら(複数の)述語の類似点や相違点が同様にそのような本質のカテゴリーの中で叙述されるならば、その述語がそのカテゴリーにおいて叙述される唯一の属性であると言ってよい場合にその述語を含む叙述表現が必然的にその事物の定義であることは明らかである。なぜならば、本質のカテゴリーにおいてその事物についての他の叙述の仕方は存在しようがないと理解されるため、他のいかなる叙述もその事物についての定義とはなり得ないからである。」-アリストテレス「トピカ」第7書、第1部
- 決定的命題とは、その命題の中に存在するある語が他の語の定義となっているものを指す(例:希望とは未来を喜びに満ちて見通すことである)。