気象学

インド洋ダイポールモード現象の気候学的特徴と影響

インド洋ダイポールモード現象の気候学的特徴と影響
インド洋熱帯域で発生する大気海洋相互作用現象「ダイポールモード現象」のメカニズム、気候への影響、日本への影響について詳しく解説します。

📌 主なポイント

  • ダイポールモード現象(IOD)は、熱帯インド洋の東西で海面水温が逆転する大気海洋現象である。
  • 1999年に海洋研究開発機構(JAMSTEC)の山形俊男らによって発見された。
  • 正のイベントと負のイベントが存在し、強さはダイポールモード指数(DMI)で計測される。
  • 日本の夏や秋の気温・降水量に影響を与え、季節予測における重要な監視対象となっている。

ダイポールモード現象(英語: Indian Ocean dipole、略称: IOD)とは、熱帯インド洋において初夏から晩秋にかけて発生する大気海洋相互作用現象である。インド洋の東西で海面水温や対流活動、海面高度偏差が双極子(ダイポール)パターンを示すことからこの名が付けられた。

正のダイポールモード現象が発生している時の温度偏差のイメージを色で表現
正のダイポールモード現象が発生している時の温度偏差のイメージを色で表現

発生の仕組みと定義

ダイポールモード現象には、熱帯インド洋西部の海面水温が高く東部が低くなる「正のイベント」と、その逆の分布を示す「負のイベント」が存在する。正のイベントでは、インド洋の南東貿易風が強まることで東部の高温な海水が西側へ移動し、東部では深海からの湧昇や海面からの蒸発によって海水温が低下する。一方、負のイベントでは貿易風が弱まり、東側に高温の海水が滞留する。

上が正のダイポールモード、下が負のダイポールモード
上が正のダイポールモード、下が負のダイポールモード。

現象の強さは、熱帯インド洋西部と南東部の海面水温偏差の差で定義されるダイポールモード指数(DMI)によって評価される。正のイベントは通常7月頃から発達し、秋頃にかけて成熟する傾向にある。

発見と研究の経緯

本現象は1999年に、海洋研究開発機構(JAMSTEC)の山形俊男やサジ・N・ハミードらによって発見された。太平洋で起こるエルニーニョ現象に類似した気候変動シグナルとして知られており、エルニーニョ現象とは独立して発生する場合もあるほか、これを誘発する場合もあることが研究によって示されている。

世界および日本への気候影響

ダイポールモード現象は、インド洋周辺の気候に対して深刻な影響を与える。正のイベントが発生すると、東アフリカでは降水量が増加し、インドネシア周辺では干ばつや森林火災が起こりやすくなる。

また、テレコネクション(遠隔相関)を通じてアジア各地の気候に変化を及ぼし、日本を含む極東地域の天候にも影響を与える。気象庁の統計的特徴によると、エルニーニョ現象が発生していない年の正のダイポールモード現象では、日本の夏に北日本や沖縄・奄美で気温が並か高くなり、秋には東日本や西日本で気温が高く、西日本で降水量が少なくなる傾向が確認されている。

よくある質問

ダイポールモード現象とは何ですか?
熱帯インド洋において初夏から晩秋にかけて、東部の海水温が低くなり西部が高くなる(またはその逆の)現象であり、大気と海洋が相互作用しながら世界の気候に大きな影響を与えます。
エルニーニョ現象との違いは何ですか?
エルニーニョ現象が主に太平洋で発生する変動であるのに対し、ダイポールモード現象はインド洋で発生します。海水温の東西の分布様式やシグナルの特徴が異なりますが、互いに関連して発生することもあります。
日本への気候にはどのような影響がありますか?
正のダイポールモード現象が発生した年などには、テレコネクションを通じて日本の夏の天候や秋の気温・降水量に影響を及ぼし、猛暑や少雨の要因の一つとなることが知られています。

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参考文献

  • インド洋ダイポール(IOD) 海洋研究開発機構 (JAMSTEC), 2008年12月.
  • 高薮縁, 川辺正樹, 中村尚, 山形俊男, 藤尾伸三『海のすべて』ニュートンプレス, 2017年, 96頁.
  • “インド洋ダイポールモード現象を発生させる一因を解明”. JAMSTEC (2022年8月8日).
  • “インド洋ダイポールモード現象発生時の日本の天候の統計的な特徴”. 気象庁.