言語学
国際英語論:グローバル・リンガ・フランカとしての英語
国際英語論の概念、ブラジ・カチュルの同心円モデル、および英語の国際的役割と英語帝国主義論に関する批判的視点を解説します。
📌 主なポイント
- ✓国際英語論は、英米の規範に縛られない国際コミュニケーションのための英語のあり方を考察する。
- ✓ブラジ・カチュルは英語の使用圏を内円、外円、拡大円の三つに分類した。
- ✓英語帝国主義論は、英語の世界的普及が文化的な不平等や支配を助長するという批判的視点である。
国際英語論とは、英米の母語話者による規範に依存せず、世界中の非英語話者が国際コミュニケーションの手段として英語をどのように活用し、標準化していくかを考察する言語学的思想です。この概念は、地球英語や世界英語とも呼ばれ、国際理解や共生を図るための共通言語としての英語のあり方を問うものです。
ブラジ・カチュルによる英語の同心円モデル
言語学者ブラジ・カチュルは、世界における英語の使用状況を「三重の同心円」モデルで分類しました。この枠組みは、英語の普及と役割を理解する上で重要な指標となっています。
- 内円(Inner Circle):イギリス、アメリカ、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドなど、英語が伝統的に母語として話されている国々。
- 外円(Outer Circle):インド、ナイジェリア、フィリピンなど、かつての植民地支配や歴史的背景から公用語として英語が定着し、行政や教育、司法でリンガ・フランカとして機能している国々。
- 拡大円(Expanding Circle):日本やスカンジナビア諸国など、英語に公的な役割はないものの、国際ビジネスや学術、若年層のコミュニケーション手段として英語が浸透している国々。
英語帝国主義論と批判的視点
英語が世界的な共通語として拡大することに対し、批判的な立場をとる研究者も存在します。これを「英語帝国主義論」と呼び、英語の普及が特定の文化や価値観の押し付けにつながる可能性を指摘しています。日本国内においても、鈴木孝夫や本名信行、船橋洋一らが国際英語のあり方を論じる一方で、大石俊一、津田幸男、中村敬らは英語支配がもたらす言語的・文化的不平等に対して警鐘を鳴らしています。
リンガ・フランカとしての英語教育
国際的な共通語としての英語(English as a Lingua Franca, ELF)の研究は、Jennifer JenkinsやBarbara Seidlhoferらによって進められています。これに関連し、特定の地域色を排除した「簡易化英語」のモデルもいくつか提案されてきました。
- ベーシック英語:1930年代にチャールズ・オグデンらが開発。
- グロービッシュ:ジャン=ポール・ネリエールが提唱した、実用性を重視した英語モデル。
- Basic Global English:Joachim Grzegaによって開発されたコミュニケーション重視の英語体系。
よくある質問
国際英語とは何ですか?
特定の英米文化に依存せず、世界中の非母語話者が国際的な意思疎通のために使用する共通言語としての英語の概念です。
ブラジ・カチュルの同心円モデルとは何ですか?
英語の普及度と役割を、母語話者圏(内円)、公用語圏(外円)、外国語としての使用圏(拡大円)の三層に分類した理論です。
英語帝国主義論とはどのような考え方ですか?
英語が世界標準語として広まることで、他言語や文化が軽視され、特定の政治的・文化的な支配が及ぶことを批判的に捉える立場です。
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参考文献
- 鈴木孝夫 (2000)『英語はいらない!?』PHP研究所
- 本名信行 (2003)『世界の英語を歩く』集英社
- 津田幸男 (2006)『英語支配とことばの平等』慶應義塾大学出版会
- Kachru, Braj B. (1982/1992) The Other Tongue: English across Cultures, University of Illinois Press
- Jenkins, Jennifer (2007) English as a Lingua Franca, Oxford University Press