無脊椎動物の多様性と生物学的分類

📌 主なポイント
- ✓無脊椎動物は脊椎動物以外の動物の総称であり、ジャン=バティスト・ラマルクが命名したInvertebrataの訳語である。
- ✓古代ギリシアのアリストテレスが『動物誌』で示した「有血動物」と「無血動物」の区分が、歴史的な源流の一つとされる。
- ✓現代の系統分類において、無脊椎動物は単系統群ではなく、数十の異なる動物門にまたがる多様な生物群の総称である。
無脊椎動物(むせきついどうぶつ)とは、脊椎動物以外の動物の総称であり、背骨や脊椎を持たない動物を指す。ジャン=バティスト・ラマルクが提唱した「Invertebrata」の訳語に由来する。伝統的には、脊椎動物以外の多細胞動物だけでなく、歴史的に原生動物を含めることもあった。

生物学の歴史において、脊椎動物とそれ以外の生物を区別する試みは古くから存在していた。古代ギリシアのアリストテレスは、『動物誌』の中で動物を「有血動物」と「無血動物」に大別しており、この無血動物の区分は後の無脊椎動物の概念とほぼ一致している。近世に入ると、カール・フォン・リンネの分類体系を経て、ラマルクによって「無脊椎動物」という大別が明確に定義された。

現代の分類学的位置づけ
分子系統学や近年の生物学的な知見の深まりに伴い、無脊椎動物という用語の扱いには議論が存在する。脊椎動物は現在、脊索動物門の1亜門と位置づけられている。一方で、従来の無脊椎動物とされてきたグループは数十もの動物門にまたがっており、単系統群ではない。頭索動物や尾索動物は、他の無脊椎動物よりもむしろ脊椎動物に近縁であることが分かっている。

動物学者のピーター・ホランドは、系統関係の観点からは無脊椎動物という区分が厳密な単系統群ではないことを認めつつも、脊椎動物が持つ「大きな体、高効率な血液循環系、動的な骨格、複雑な脳、保護に働く頭蓋、精緻な感覚器」といった特徴の複合や、遺伝子上の全ゲノム重複の歴史的背景から、脊椎動物とその他の動物群を分けて考えることには一定の意義があるとしている。

関連する生理学的特徴
無脊椎動物の体液や消化管の構造には、脊椎動物とは異なる特徴が見られる。広義の体液として、血液とリンパ液が厳密に分化していない「血リンパ(ヘモリンパ)」を持つものが多く、消化管内では食べ物を包み込んで腸内細菌などから消化管を守るキチン質の膜である「囲食膜」を持つ種も確認されている。
よくある質問
無脊椎動物とはどのような動物ですか?
無脊椎動物という分類は現在の系統学でも有効ですか?
無脊椎動物の体液にはどのような特徴がありますか?
関連記事
参考文献
- 石川統・黒岩常洋・塩見正衛・松本忠夫・守隆夫・八杉貞雄・山本正幸(編)『生物学辞典』東京化学同人、2010年。
- 白山義久(編)『バイオディバーシティ・シリーズ5 無脊椎動物の多様性と系統』裳華房、2006年。
- ピーター・ホランド『動物たちの世界 六億年の進化をたどる』東京化学同人、2014年。