化学

イオン結晶の構造と物理的性質

イオン結晶の構造と物理的性質
イオン結晶の定義、クーロン力による結合、結晶構造の特徴、劈開性や電気伝導性などの物理的性質について詳しく解説する化学記事。

📌 主なポイント

  • イオン結晶は異符号のイオン同士がクーロン力によって結びついて形成される。
  • 強い静電引力により一般に融点が高く硬いが、衝撃に対しては脆く劈開性を示す。
  • 固体では電気伝導性を持たないが、融解時や水溶液中ではイオンが移動するため電気を導く。
  • 結晶構造は主にイオンの電荷比やイオン半径の比率(配位数)によって決定される。

イオン結晶(イオンけっしょう、英: ionic crystal)とは、陽イオンと陰イオンが静電引力(クーロン力)によって引き合い、規則正しく配列して形成される結晶のことである。

物理的性質

イオン結晶は、異符号のイオン同士が隣り合いクーロン力によって強く固定されているため、一般に融点が高く硬いという特徴を持つ。その一方で、外力が加わると同符号のイオン同士が接近し、静電的な反発によって容易に破壊されるため、脆く割れやすい性質も併せ持っている。この特定の面に沿って一定の角度で割れやすい性質を劈開(へきかい)と呼ぶ。

固体状態では通常電気伝導性を示さないが、融解して液体となった場合や、水などの極性溶媒に溶解して水溶液となった場合には、電荷を持ったイオンが自由に移動できるようになるため電気を導くようになる。水中で電離するこのような物質は電解質と呼ばれる。

また、構成する陽イオンと陰イオンの電気陰性度の差が小さい場合、結合は純粋なイオン結合から共有結合性を帯びるようになり、共有結合結晶に近い性質を示すことがある。例えばヨウ化銀や硫化亜鉛などは共有結合性が強く、水に対する溶解度が低い傾向にある。

結晶構造

イオン結晶の構造は、構成するイオンの電荷の比率や、陽イオンと陰イオンのイオン半径の比率(半径比)によって決まる配位数に大きく左右される。典型的な構造としては以下のようなものが挙げられる。

塩化ナトリウム型構造の単位格子モデル
塩化ナトリウム型構造

1:2型や2:1型の電解質では、蛍石型構造やヨウ化カドミウム型構造など、多様な結晶構造をとる。また、イオン結晶全体の結合エネルギーの指標となる格子エネルギーは、イオンの電荷、イオン半径、および結晶構造に基づいて決定され、融点や溶解度などの物性に多大な影響を与えている。

主なイオン結晶の例

イオン結晶は、様々な価数の陽イオンと陰イオンの組み合わせによって数多く存在する。代表的な物質として以下のものが知られている。

  • 1価の陽イオンと1価の陰イオン:塩化ナトリウム(NaCl)、フッ化リチウム(LiF)、カリウム塩など
  • 2価の陽イオンと2価の陰イオン:酸化マグネシウム(MgO)、硫酸カルシウム(CaSO4)など

よくある質問

イオン結晶が硬いのに脆いのはなぜですか?
異符号のイオン同士が強く結びついているため硬いですが、外力が加わると同符号のイオン同士が接近して強い反発力が生じ、容易に割れてしまうためです。
イオン結晶は電気を通しますか?
固体の状態ではイオンが固定されているため電気を通しませんが、融解して液体になったり水に溶けて水溶液になったりすると、イオンが自由に移動できるようになるため電気を通します。
劈開とは何ですか?
結晶が特定の方向に沿ってスパッと割れやすい性質のことです。イオン結晶に外力が加わり、同符号のイオンが向かい合うことで反発が生じ、特定の面で破壊が起こるために生じます。

関連記事

共有結合結晶学物性物理学電解質

参考文献

新村陽一 『無機化学』 朝倉書店、1984年。
FA コットン, G. ウィルキンソン著, 中原 勝儼訳 『コットン・ウィルキンソン無機化学』 培風館、1987年。