林業・環境

人工林の構造と歴史的背景

人工林の構造と歴史的背景
植林や播種によって形成される人工林の定義、管理手法、日本や世界における歴史的変遷と現状の課題について詳しく解説する事典記事。

📌 主なポイント

  • 人工林とは、植林や播種によって成立した樹木が優先してみられる森林のことであり、育成林とも呼ばれる。
  • 世界森林資源評価(FRA2020)によると、世界全体の森林に占める人工林の割合は約7%である。
  • 日本の森林面積は約2,510万haであり、その約4割にあたる約1,000万haが人工林である。
  • 日本の人工林では主にスギやヒノキが植栽されてきたが、木材価格の低迷や所有者不明などの問題により未整備な森林の存在が課題となっている。

人工林(じんこうりん)とは、植林や播種によって成立した樹木が優先的に見られる森林のことである。人間の手による苗木の植栽、播種、挿し木などが行われ、樹木の世代交代である造林が達成されている林を指し、育成林とも呼ばれる。人間が樹木の生殖に関わることにより、品種や品質が整えられ、工業・建築材料としての木材供給を行う林業に適した樹木群となる。

国際連合食糧農業機関(FAO)が作成・公表する世界森林資源評価(FRA)では、天然更新による樹木の構成が優先している森林を天然林、植林や播種で成立した樹木が優先している森林を人工林と定義している。人工林の対義語は天然林であるが、天然林や原生林などの用語は立場によって意味合いが異なる場合がある。

人工林(左)と天然林(右)の境界(丹沢山地西部・2012年11月)
人工林(左)と天然林(右)の境界(丹沢山地西部・2012年11月)

植栽と管理の手法

従来の人工林は、一定面積の地表を樹木のない状態にしてから同一年齢の同一樹種を一度に植栽する単層林施業が主流であった。これにより同一年齢の木材を効率的に生産できる一方、皆伐による環境への負荷や、一斉に強風被害を受けるリスクなどが指摘されている。

苗木の植栽は、一般的に1ヘクタールあたり2,000本から3,000本程度の密度で行われる。標準より多い場合を密植、少ない場合を疎植と呼ぶ。密植は、早い段階で土地を覆うことにより表土の浸食や乾燥を防ぎ、地力減退を軽減させる目的などで行われるが、適切な手入れが遅れると病虫害や風害に弱い林になる危険性がある。

生育の過程では、幼齢期からの綿密な手入れが不可欠である。主な作業として、周囲の草本を刈り払う下草刈り、つる植物を取り除くつる切り、森林内の照度を調整して密度を管理する間伐、節のない材木を作るための枝打ち、そして形の悪い木を間引く除伐が行われる。

枝打ちされた杉の様子
枝打ちされた杉

各国の状況と歴史

世界森林資源評価(FRA2020)によると、世界における人工林面積は約2億9,400万haで森林全体の7%を占めており、その割合はアジアで最も高く、アフリカや南米で低い。国別では中国などが大規模な人工林を有している。

日本における歴史と統計

日本における造林の歴史は古く、神社仏閣の資材確保などに端を発する。戦国時代から江戸時代にかけても城や城下町造りのために植林が奨励された。戦後においては、木材需要の急増を背景に、成長量の少ない天然林から成長量の高い人工林への転換(拡大造林)が推進された。しかし、1970年代以降の輸入木材の自由化に伴い木材価格が暴落し、多くの人工林が採算性の低下から手入れの行き届かない状態に置かれることとなった。

日本の森林面積は約2,510万haであり、その約4割にあたる約1,000万haが人工林である。地方別に見ると、四国や九州などで人工林率が高い傾向にある。

人工林が抱える課題

近年の人工林における最大の課題は、所有者間の境界の不明瞭化、木材価格の低迷による採算性の悪化、林家の高齢化と後継者不足などから生じる手入れ不足である。整備が行われないまま放置された人工林では、下層植生が発達せずに土砂の流出や防災機能の低下を招く危険性が指摘されている。

よくある質問

人工林と天然林の違いは何ですか?
人工林は植林や播種など人間の手によって樹木が成立し世代交代が行われる森林であるのに対し、天然林は天然更新による樹木の構成が優先している森林を指します。
人工林の管理にはどのような作業がありますか?
主な管理作業として、下草刈り、つる切り、間伐、枝打ち、除伐などが挙げられ、樹木の生育や品質の向上、森林環境の維持のために定期的な実施が必要となります。
日本の人工林で主に植栽されている樹種は何ですか?
日本の人工林では、住宅建築などの用途に向けて主にスギやヒノキが植栽されてきました。

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参考文献

  • 林野庁 世界森林資源評価(FRA)2020メインレポート 概要
  • 森林・林業学習館 人工林と天然林
  • 林野統計要覧(林野庁編)