哲学・人類学

人類の概念と歴史的展開

生物種としてのヒトと、共同性や理念としての「人類」の概念、歴史的な変遷について解説する百科事典記事。

📌 主なポイント

  • 人類という用語には、生物種としてのヒトと、実現すべき共同性としての側面がある。
  • 歴史的に、すべてのアダムの子孫とする人類単元説と、複数の起源を想定する人類多元説の間で議論が交わされた。
  • 生物種としての人類は現生種および化石種のヒトの総称であり、直立歩行や犬歯の短小化などの特徴を持つ。

人類(じんるい、英: humanity)とは、個々の人間や民族などの相違点を越える《類》としての人間のことである。この用語には、「生物種としてのヒト」という側面と、「ひとつの《類》として実現すべき共同性」という側面が含まれている。

概念の歴史的変遷

ヨーロッパのキリスト教世界においては、人類はすべてアダムの子孫であるとする「人類単元説」や、「神の似姿」としての人間観が共有されていた。しかし、大航海時代を迎えてヨーロッパ外の人々との接触が増加すると、彼らをどのように位置づけるかという問題が浮上した。ビュフォンらは、人類間の差異は風土・食物・習俗の違いに由来し、人類はひとつの種であるとする単元説を支持した一方、ヴォルテールなどは「人類多元説」を唱えた。

こうした議論は19世紀にも継続し、1859年にパリ人類学会を創設したポール・ブローカなども人種間の差異について言及している。その後、進化論の影響を受けた社会ダーウィニズムが登場し、帝国主義を正当化する文脈で利用されることもあった。

《人類性》と共同性の概念

伝統的なヨーロッパにおける「市民と蛮人」や「キリスト教徒と異教徒」といった区別に対し、啓蒙時代には差異を越える「humanity(人類性)」という観念が現れた。これにより、人類史は人間の自己完成能力による進歩の歴史として捉えられるようになり、人類は《実現すべき共同性》として意識されるようになった。ドゥニ・ディドロ、オーギュスト・コント、ルードヴィヒ・フォイエルバッハらがこの人類性に関して重要な論考を残している。

生物種としての人類

生物学的な文脈における「人類」は、現生種および化石種の別を問わず「ヒト」という概念に含まれるものの総称である。どの範囲までを人類の範疇に含めるかについては議論が存在し、ホモ・サピエンス以外の化石種の位置づけについても研究が続けられている。共通する生物学的特徴としては、直立二足歩行、犬歯の短小化、尾の退化などが挙げられる。

よくある質問

人類単元説と人類多元説の違いは何ですか?
人類単元説は人類をすべて同一の起源(アダムの子孫や単一の種)とする考え方であり、人類多元説は人類に複数の異なる起源を認める立場です。
生物種としての人類にはどのような特徴がありますか?
直立二足歩行、犬歯の短小化、尾の退化などが共通する特徴として挙げられます。

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参考文献

  • 『岩波 哲学思想事典』p.858 【人類】 阪上孝 執筆
  • ブリタニカ百科事典【人類】