司法の概念と制度的特徴
📌 主なポイント
- ✓司法は、立法および行政と並ぶ国家作用の一つであり、法を適用し具体的な訴訟を裁定する。
- ✓大陸法系の国々では伝統的に民事・刑事裁判を司法とし、行政事件は別系統の行政裁判所が管轄してきた。
- ✓英米法系の制度を模した日本国憲法においては、行政事件の裁判も通常の裁判所が管轄する司法に含まれる。
司法(しほう、英: Judiciary)とは、立法および行政と並ぶ国家作用の一つである。実質的意義においては法を適用し宣言することにより、具体的な訴訟について裁定することをいうが、形式的意義においては司法府に属する作用の総称である。この国家作用を行う権能を司法権といい、三権分立における行政権や立法権と対比される[2]。
司法の概念
実質的意義の司法
国家作用が作用自体の性質という点に着目して立法・行政・司法に三分類されるときに、これらはそれぞれ実質的意義の立法、実質的意義の行政、実質的意義の司法と概念づけられる。
実質的意義における司法とは、一般に「具体的な争訟について、法を適用し、宣言することにより、これを裁定する国家作用」と定義される。これは近代以降の各国・各時代に通じる司法と司法権の共通項を示したものであり、近代の権力分立制とともに生成してきた[2]。
もっとも、国家作用が行政・立法・司法に分離独立するに至った歴史的経緯や法的伝統は各国によって異なるため、司法という言葉で呼ばれる国家作用の内容や範囲には差異が存在する。特に行政と司法との理論的な区別については議論があり、権限が与えられている官署の区別に対応しているに過ぎないとの指摘もなされている[1]。
大陸法系と英米法系における違い
行政事件の裁判に関する扱いにおいて、法的伝統の違いが明確に現れる。
フランスやドイツなどの大陸法系の国々では、伝統的に司法とは民事事件および刑事事件の裁判作用を指し、行政事件の裁判を含まないと解されてきた。この体制のもとでは、行政事件は通常の裁判所とは別個に設置された行政裁判所において審理・裁判される。例えばフランスの国務院(コンセイユ・デタ)は最上級審の行政裁判所としての権能を有し、組織上は行政機関に位置づけられている。
これに対し、英米法(コモン・ロー)系の国々では、行政事件の裁判も司法に含まれると解され、行政事件の裁判作用は通常の裁判所の権能に属する。日本国憲法における「司法」および「司法権」は英米法系の制度に倣っており、行政事件も通常の裁判所が裁判を行うこととされている(日本国憲法第76条1項、2項)[3]。
形式的意義の司法
形式的意義における司法は、司法府に属する一切の作用を意味する。
現実の個々の国家作用がいずれの機関に配当されるかは、憲法の体制や個別の法律によって異なる。そのため、現実に配当されている機関に着目して国家作用を分類したものが形式的意義の司法である。例えば、日本国憲法における最高裁判所の規則制定権(日本国憲法第77条)は実質的には立法作用の性質を持つが、司法権の独立の観点から最高裁判所の権能とされているため、形式的意義の司法に含まれることになると解されている。
日本の司法の変遷
大日本帝国憲法における司法
大日本帝国憲法のもとでは、司法権とは民事事件および刑事事件の裁判作用を行う権能を指した。行政事件は通常の裁判所とは別系統の行政裁判所の所管とされていた。また、軍人・軍属などの刑事事件を裁判する軍法会議や、皇族の民事事件を裁判する皇室裁判所などの特別裁判所も設置されていた。
日本国憲法における司法
日本国憲法の下では、前述の通り英米法系の影響を受け、司法権の範囲に通常の行政事件の裁判も含まれることとなった。また、憲法第76条2項により特別裁判所の設置が禁止され、司法権は最高裁判所および法律の定めるところにより設置される下級裁判所の統合された司法機関に属することとされている。
よくある質問
司法とは何ですか?
実質的意義の司法と形式的意義の司法の違いは何ですか?
日本国憲法における司法権の特徴は何ですか?
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参考文献
- 塩野宏『行政法1 第4版 行政法総論』有斐閣、2005年、6頁。
- 伊藤正己『憲法 新版』弘文堂、1990年、665-666頁。
- 昭和27年10月8日 最高裁判所大法廷判決(民集6巻9号783頁)