地球科学

海溝の地形学およびプレートテクトニクスにおける特徴

海底における細長く深い凹地である海溝の定義、プレートテクトニクスにおける沈み込み帯としてのメカニズム、主な海溝の一覧、および関連する地震や火山活動について解説します。

📌 主なポイント

  • 海溝は細長く非常に深い非対称断面を持つ海底の凹地であり、国際水路機関(IHO)の『B-6 海底地形名称標準』などで定義されている。
  • プレートテクトニクスにおいて海洋プレートが他のプレートの下に沈み込む「沈み込み帯」に形成される。
  • 水深6,000メートル以上のものを海溝、それより浅いものをトラフ(舟状海盆)と区別することがある。
  • マリアナ海溝にあるチャレンジャー海淵は、世界で最も深い場所として知られている。

海溝(かいこう、英: trench)とは、海底が細長い溝状に深くなっている場所を指す地形学的名称である。国際水路機関(IHO)の刊行物『B-6 海底地形名称標準』では、「細長く、特徴的に非常に深い、非対称断面を示す海底の凹地。比較的急峻な斜面を有する。」と定義されている。その深さは最大で水面下1万メートルを超える場所に達する。

プレートテクトニクスと沈み込み帯

現代の地球科学におけるプレートテクトニクス理論において、海溝は海洋プレートが別のプレートの下へと沈み込む沈み込み帯に形成される。海嶺で生成された比較的冷たく重い海洋プレートがアセノスフェアに向けて沈み込むことで、このような急峻な深所が生まれる。

海溝から斜め下方向に向けて薄い板状の地震多発域(和達・ベニオフ帯)が伸びており、その上面で逆断層型のズレが生じていることが、プレートの沈み込みを示す主要な証拠の一つとされている。また、活動的大陸辺縁部において大陸棚が狭く大陸斜面が急峻になる地域で形成されやすい。

トラフ(舟状海盆)との違い

海溝と類似した海底構造にトラフ(舟状海盆)がある。一般に水深6,000メートル以上の深さを持つものを海溝と呼び、それより浅いものはトラフと呼ばれることが多い。日本の太平洋側にある南海トラフなどは浅い部類に入るが、プレートテクトニクスの観点からは海溝と同様の沈み込み帯であり、同様のメカニズムで地震を引き起こす。

地震・火山活動との関係

沈み込み帯である海溝周辺では、沈み込む海洋プレートと上位のプレートとの間の摩擦により、スムーズな移動ではなく間欠的な急激なズレが発生する。これが海溝型地震を引き起こす要因となる。また、沈み込んだ海洋プレートが一定の深度に達すると岩石の一部が融解してマグマとなり、地表へ上昇して火山を形成するため、海溝に平行する形で島弧などの火山帯が伴うことが多い。

主な海溝の一覧

『理科年表』等に記載されている主な海溝と最大深度の例は以下の通りである。

海溝名場所最大深度
マリアナ海溝太平洋マリアナ諸島の東側10,924m(世界最深)
トンガ海溝太平洋トンガの東10,882m
フィリピン海溝太平洋フィリピンの東側10,057m
日本海溝太平洋東北地方の沖合8,020m

なお、マリアナ海溝の中で最も深い場所はチャレンジャー海淵と呼ばれており、地球上で最も深い海淵として知られている。

湧水域の存在

海溝において海洋プレートが沈み込む際、長年蓄積された堆積物から断層に沿って間隙水が搾り出される場所が存在し、これは湧水域と呼ばれている。1984年にオレゴン沖で発見されて以降、南海トラフや日本海溝などでも確認されており、硫化水素やメタンを含む海水が湧き出していることが特徴である。

よくある質問

海溝とトラフの違いは何ですか?
一般に水深6,000メートル以上の深さを持つものを海溝と呼び、それより浅いものはトラフ(舟状海盆)と呼びます。ただし、どちらもプレートの沈み込み帯である場合があります。
海溝はどのようにして形成されますか?
プレートテクトニクスにおいて、海嶺などで生まれた海洋プレートが別のプレートの下へ沈み込む沈み込み帯において形成されます。
世界で最も深い海溝はどこですか?
太平洋のマリアナ諸島の東側にあるマリアナ海溝であり、その中でもチャレンジャー海淵が世界最深(約10,924m)とされています。

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参考文献

  • IHO(国際水路機関)の刊行物『B-6 海底地形名称標準』
  • 瀧澤美奈子著 『深海の不思議』 日本実業出版社、2008年。
  • 国立天文台編 『理科年表』 丸善。