民俗学・日本の伝統行事

雪国日本の伝統行事「かまくら」の歴史と文化的背景

雪国日本の伝統行事「かまくら」の歴史と文化的背景
秋田県や新潟県などの豪雪地帯に伝わる小正月の伝統行事「かまくら」の歴史や水神信仰、地域ごとの特徴について詳しく解説します。

📌 主なポイント

  • かまくらは、秋田県や新潟県などの豪雪地帯に伝わる小正月の伝統行事および雪で作る雪洞である。
  • 横手のかまくらは、武家町で行われていた火祭り(左義長)と町人町の水神祭りが融合して成立したとされる。
  • 新潟県の中越地方では、同様の雪洞や行事を「ほんやら洞」と呼んでいる。

「かまくら」とは、主に秋田県や新潟県といった日本の豪雪地帯に伝わる小正月の伝統行事、および雪で作られた構造物(雪洞)そのものを指す言葉である。雪で作った家の中に祭壇を設け、水神を祀る習俗として古くから親しまれてきた。

一般には行事として作られるものに限らず、雪を掘って作った洞穴状の構造物全般やかまくら状の雪室を「かまくら」と呼ぶ。また、新潟県の魚沼地方などでは、同様の雪洞や行事を「ほんやら洞」と称することもある。語源については、形が竃(かまど)に似ていることから「竃蔵」とする説や、神の御座所である「神座(かみくら)」が転じた説などが存在する。

横手公園のかまくらの全景
横手公園のかまくら

行事の歴史と起源

かまくらの起源は、京都御所の清涼殿で行われていた吉書焼きや左義長の遺風を移したものであるといわれている。鎌倉時代初期に二階堂氏がこの地方の地頭となった時期に始まったと伝えられ、本来は豊作祈願の火祭りとして続けられてきた。

秋田県内では横手市や仙北市などに伝わっており、地域ごとに異なる形態や変遷をたどっている。例えば、美郷町六郷地区の「六郷のカマクラ行事」は、約700年の歴史を持ち国の重要無形民俗文化財に指定されている。延暦21年(802年)に征夷大将軍の坂上田村麻呂が創建したとされる秋田諏訪宮の小正月神事として、2月11日から15日にかけて行われてきた。

秋田県横手市のかまくら行事

横手市におけるかまくらは、毎年2月15日と16日に開催される同市を代表する小正月行事である。雪洞の中に祭壇を設けて水神を祀り、中で子どもたちが餅を焼いたり甘酒を温めたりして訪れる人々をもてなすのが特徴である。

横手公園会場にかまくらが設置されている様子
横手公園会場のかまくら

歴史的に見ると、横手のかまくらは川を挟んだ「内町」と「外町」という2つの異なる行事が融合して成立したとされる。横手川右岸の士族の町であった内町では、四角い雪の壁の中に門松や注連縄などを入れて燃やす火祭りとしての左義長(かまくら)が行われていた。一方、左岸の町人の町であった外町では、飲料水である井戸の側に水神様を祀る「水神祭り」が行われていた。

明治から大正にかけてポンプ式井戸が普及すると水神祭の影が薄くなったが、子どもが遊びで作っていた雪洞に祭壇が持ち込まれ、子どもたちが水神の神主の役割を担うようになった。これら内町の左義長と外町の水神祭りが1897年前後に合体し、現在のような様式が形成されたと考えられている。

民家苑木戸五郎兵衛村会場のかまくら
民家苑木戸五郎兵衛村会場のかまくら
よこてイースト会場にかまくらが並んでいる風景
よこてイースト会場のかまくら

1936年にこの地を訪れたドイツ人建築家のブルーノ・タウトが著書『日本美の再発見』の中で、子どもたちが雪洞の中で水神を祀りながら過ごす素朴で幻想的な情景を絶賛したことで、観光行事としても広く知られるようになった。

新潟県のほんやら洞

新潟県の中越地方では、同様の雪洞や行事を「ほんやら洞」と呼んでいる。小千谷市山谷・坪野地区の「山谷坪野ほんやら洞まつり」や、南魚沼市の「六日町温泉ほんやら洞まつり」などが知られており、子どもたちが雪室を作って水神を祀り、鳥追いの歌を歌う点などは秋田県の伝統行事と共通している。

兵庫県で見られる小規模なかまくらの例
兵庫県のかまくら(積雪量が少なく小さいものが多い)
小型のミニかまくらが多数並ぶ光景
ミニかまくら

よくある質問

かまくらの語源は何ですか?
形が竃(かまど)に似ていることから「竃蔵」とする説や、神の御座所である「神座(かみくら)」が転じた説などがあります。
横手のかまくらはどのような行事ですか?
毎年2月15日と16日に行われ、雪で作った雪洞の中に祭壇を設けて水神を祀り、子どもたちが訪問者を甘酒や餅でもてなす小正月行事です。
新潟県の「ほんやら洞」とは何ですか?
新潟県中越地方で伝わる同様の雪洞や行事の呼び名で、子どもたちが雪室を作って水神を祀り、鳥追いの歌を歌う風習があります。

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参考文献

横手市史編さん委員会『横手市史 昭和編』横手市、1981年。
稲雄次『カマクラとボンデン』秋田文化出版社、1990年。
横手市『横手市史 特別編 文化・民俗』横手市、2006年。
横手市『横手市史 通史編 近現代』横手市、2011年。