言語学

カナダで話される英語の変種と特徴

カナダ英語(CaE)の歴史、イギリス英語とアメリカ英語が混在する独自の綴り、言語的特徴について解説します。

📌 主なポイント

  • カナダ英語は、アメリカ英語とイギリス英語の要素を併せ持つ英語の変種である。
  • 2006年の国勢調査では、カナダ人口の約58.8%が英語を母語としていた。
  • 綴りにおいては、イギリス式の「-our」「-centre」と、アメリカ式の「-ize」などが混在している。

カナダ英語(カナダえいご、英語: Canadian English、略語: CaE)は、カナダ国内で使用されている英語の諸方言の総称である。アメリカ英語と語彙や発音の面で多くの共通点を持ちながらも、イギリス英語の綴りや用語の要素を保持している点が大きな特徴となっている。また、フランス語の影響を受けた表現や、地域による多様性も見られる。

2006年の国勢調査によると、カナダの人口の約58.8%にあたる約1,700万人が英語を第一言語(母語)としている。

歴史的背景

カナダ英語」という用語が確認された初期の記録としては、1857年のカナダ学会におけるアーキボルド・コンスタブル・ギーキー牧師のスピーチが挙げられる。スコットランド生まれのギーキーは、当時イギリスからの移民が話す英語を規範とし、それと異なるカナダの言葉に対して批判的な見方を示していた。

カナダ英語の形成には、過去数百年における複数の移民の波が深く関わっている。最大の言語的基盤を作ったのは、アメリカ独立戦争の後に北上したイギリス系住民(ロイヤリスト)であり、その後の1910年から1960年にかけての移民の波や多文化主義政策が、現在の言語的多様性を形成する土壌となった。また、先住民族の言語やケベック・フランス語からの語彙の流入も、カナダ英語の発展に影響を与えた。

綴りの特徴

カナダ英語の正書法(綴り字)は、イギリス英語とアメリカ英語の規則が混ざり合った独特の体系を持つ。

  • -our / -re の維持: フランス語由来の単語において、アメリカ英語の「color」や「center」ではなく、イギリス英語に近い「colour」「centre」といった綴りが好まれる。また名詞の「defence」や「offence」などもイギリス式が使われる。
  • -ize の使用: 一方で、動詞の語尾に関しては「realize」や「paralyze」のようにアメリカ英語と同様に「-ize」や「-yze」が使われることが多い。
  • 産業史の影響: 小切手を意味する「cheque」はイギリス式の綴りが維持される一方、自動車関連の「tire(タイヤ)」などはアメリカ英語の用語が採用されている。これは、それぞれの産業における歴史的な経済的結びつきを反映している。

他の英語との比較

カナダ英語は、アメリカ英語とイギリス英語の語彙が混在していることで知られる。例えば、エレベーターを意味する単語としてアメリカと同じ「elevator」を使用するが、アパートの呼称や一部の日用品ではイギリス英語由来の表現が残ることもある。公式な文書や国会の議事録では伝統的な綴り規則が基準とされており、国内の新聞社や出版社においても独自の編集方針によってイギリス式とアメリカ式の綴りが使い分けられてきた。

よくある質問

カナダ英語の最大の特徴は何ですか?
アメリカ英語に近い語彙や発音を持ちながら、イギリス英語の綴り(colourやcentreなど)や独自の表現を保持している点です。
カナダ英語の綴りはイギリス英語とアメリカ英語のどちらに似ていますか?
両方の特徴が混ざり合っています。名詞の綴りや語尾の一部にはイギリス英語の傾向が見られる一方、動詞の語尾などはアメリカ英語に近い形式が好まれます。
カナダで英語を母語としている人の割合はどれくらいですか?
2006年の国勢調査によると、カナダ人口の約58.8%にあたる約1,700万人が英語を第一言語としています。

関連記事

イギリス英語アメリカ英語北アメリカ英語英語の方言ケベック・フランス語

参考文献

  • Braille Literacy Canada. “History of Braille (UEB)”. 2016年.
  • Hammarström, Harald; Forkel, Robert; Haspelmath, Martin et al., eds. “カナダ英語”. Glottolog 2.7. Jena: Max Planck Institute for the Science of Human History, 2016.
  • Oxford Press and Katherine Barber. The Canadian Oxford Dictionary. Toronto, Ontario: Oxford University Press, 2001.
  • Allemang, John. “Contemplating a U-turn”. The Globe and Mail, 1 September 1990, p. D6.