観光の概念・歴史と近代政策の展開

📌 主なポイント
- ✓観光の語源は中国の古典『易経』の一節「観国之光」に由来するとされる。
- ✓1840年代にイギリスでトーマス・クックが鉄道を利用したパッケージツアーを開始したことが旅行産業の誕生とされている。
- ✓日本では2008年10月1日に国土交通省の外局として観光庁が発足した。
観光(かんこう)とは、一般的には楽しみを目的とする旅行全般を指し、狭義には他の国や地方を訪れて風景・史跡・風物などを見聞したり体験することを指す。広義には、人々のこうした行動によって生起する関連事象や社会現象を含めて捉えられる。
用語の概念と定義
観光の定義は時代とともに変遷しており、識者の間でも見解が分かれている。英語のsightseeingは「現地の名所を訪れる活動」と定義され、日本語の狭義の観光概念と親和性が高い。一方、tourismは関心を持たれる場所を訪れるための商業的な組織や運営を重視する側面があり、より広範な移動や旅行態様を指すことが多い。国連世界観光機関(UNWTO)などの国際機関では、日常生活圏を離れ、訪問地での雇用を除く1年未満のビジネスやレジャー等の目的で1泊以上滞在した者を「ツーリスト」と定義している。
歴史的背景
観光を主たる目的とする旅の歴史は古く、古代エジプトの記録や古代ギリシャ・ローマにおけるオリンピック観戦、神殿への参詣などにその端緒が見られる。古来より聖地への巡礼も主要な移動の形態であった。近世のヨーロッパでは、イギリスの貴族やジェントリ層の間で教育を目的とした周遊旅行である「グランドツアー」が流行した。産業革命の進展に伴い温泉地や海浜への滞在も行われるようになり、近代ツーリズムの萌芽となった。1840年代にはイギリスのトーマス・クックが鉄道を利用したパッケージツアーを始め、旅行産業が誕生した。
日本における観光の歴史と用語の展開
日本においては、中世以降の神社仏閣への参拝や、江戸時代中期以降の伊勢参宮などの集団参詣、名所巡りが広く行われていた。中国の古典『易経』の「観国之光」に由来するとされる「観光」の語は、1855年にオランダから献上された軍艦「観光丸」の艦名などで使用が確認されている。明治時代以降、鉄道網の発達とともに国内旅行が盛んになり、1893年には日本初の外客誘致団体である喜賓会が設立された。戦前においては1930年に鉄道省の外局として国際観光局が設置され、インバウンドを中心とした外客誘致政策が進められた。
近代以降の観光政策
戦後、高度経済成長を経てマスツーリズムが到来し、国内旅行が一般化した。1963年には観光基本法が制定され、1986年には海外旅行倍増計画(テン・ミリオン計画)が打ち出された。2003年からはビジット・ジャパン・キャンペーンが開始され、2007年には観光立国推進基本法が施行された。2008年には国土交通省の外局として観光庁が発足し、総合的な観光政策の推進が図られている。