乾湿計の仕組みと種類:湿度測定の原理から気象観測まで

📌 主なポイント
- ✓乾湿計は同一構造の2本の温度計を用い、一方を水で湿らせて湿度を測定する。
- ✓実用範囲はおよそ気温0から50℃、相対湿度10%から95%である。
- ✓アスマン通風乾湿計は輻射熱の影響を防ぐため円筒に温度計を内蔵し、一定速度で通風する。
- ✓精密測定ではスプルンクの公式を用いて湿度を算出する。
乾湿計(かんしつけい、乾湿球湿度計)は、同一構造形状かつ表示精度を揃えた2本のガラス棒状温度計を並行に固定し、何れか1本の感温球にガーゼを巻いて水で湿潤させる構造を持つ湿度計である。乾球温度から気温を、乾球温度と湿球温度の温度差から湿度を同時に測定することができる。
一般の温度・湿度環境での測定に適しており、極端な高温・低温・低湿度・低気圧での測定では誤差が大きくなるものの、金属ばねや毛髪を用いた湿度計と比較して誤差が小さいという特徴がある。実用範囲はおよそ気温0から50℃、相対湿度10%から95%であり、この範囲を外れると誤差が急増する。
測定の原理
2本の温度計のうち、一方は水で球部を常に湿らせて測定する。湿球は球部で水が蒸発する際の蒸発熱によって熱が奪われるため、通常もう一方の温度計(乾球)よりも低い温度を示す。しかし、気温が氷点下の場合は湿球が薄い氷の層で覆われるため、乾球よりも高い温度を示すことがある。
精密測定の場合、相対湿度は乾球温度または湿球温度と乾球・湿球間の温度差、および気圧からスプルンク(Adolf Sprung, 1848年 - 1909年)の式を用いて計算される。補正値は各通風方式ごとに用意されている。
ここで、eは空気中の水蒸気分圧、eswは湿球温度における飽和水蒸気圧、Aは乾湿計係数、pは気圧、tdは乾球温度、twは湿球温度である。
適切なメンテナンスと取り扱い
湿球が適切な湿潤状態でないと正確な測定はできない。湿球に巻くガーゼは木綿100%で油分や糊気を除去したものが最も適しており誤差が小さくなる。ガーゼや湿潤に用いる水に油分が含まれていると蒸発が阻害され、実湿度より高い方向の誤差が増大する。
ガーゼが汚れた場合は、新しいガーゼを煮沸または漂白して油分や糊気を十分に除去したものに取替える必要がある。湿潤に用いる水は、不純物が僅少な精製水が最適である。水道水や井戸水は不純物含有量が多いためガーゼの汚損や腐食が早く、含有するカルシウムが感温球に付着固着すると誤差が増大する上、清掃が困難になるため精製水を用いるのが望ましい。
主な種類
アウグスト乾湿計
アウグスト乾湿計は、湿球と乾球とを大気中に開放した構造のものであり、壁面や卓上スタンドなどに固定して測定に用いられる。
乾球も湿球も露出しているため風当たりや輻射熱の影響を受けやすく誤差が大きくなりやすいため、直射日光や風に曝されない百葉箱内に取り付けて用いられる例が多い。畜産農業や養蚕、倉庫の湿度管理、空調設備や建物内の定点観測、気象観測などの業務用途では光沢メッキを施した金属フレームに水銀一重ガラス管温度計を取り付けたものが多く見られる。簡易型や家庭用では、軽質な木板やプラスチック製基盤にアルコール温度計を組み込んだものが用いられる。
アスマン通風乾湿計
ドイツの気象学者アドルフ・リヒャルト・アスマンが考案したもので、通風湿球湿度計とも呼ばれる。輻射熱による誤差を防ぐため、クロムメッキされた二重金属円筒または断熱性合成樹脂製円筒に湿球・乾球を内蔵し、通風器で一定速度の風を送る仕組みになっている。
不規則な気流や日射の影響を受けにくく安定しているため、環境測定や野外測定、他の湿度計の校正用標準器に用いられる。湿球を湿潤させた後は一定の通風状態を維持し、測定者の体温や呼気の影響を与えないように素早く温度を読み取る必要がある。
その他の乾湿計
熱電対を用いて乾球部と湿球部の温度差を測定する「温度差式通風乾湿球湿度計」や、ハンドルまたは長いひもに取り付けた温度計を回転させて使用する「振り回し式乾湿計」などが存在する。
よくある質問
乾湿計の湿球温度が乾球温度より低くなるのはなぜですか?
湿潤させる水に水道水や井戸水ではなく精製水が推奨されるのはなぜですか?
アスマン通風乾湿計の特徴は何ですか?
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参考文献
- 山口隆子「日本における百葉箱の歴史と現状について」『日本気象学会機関誌「天気」』第53巻第4号、2006年。
- 気象庁「地上気象観測の概要」
- 気象庁「気象観測の手引き」1998年。