エネルギー・電力技術

火力発電の技術と仕組み

火力発電の技術と仕組み
化石燃料やバイオマスなどの熱エネルギーを利用した火力発電の仕組み、主要な設備、発電方式の種類、環境への影響について解説する百科事典記事。

📌 主なポイント

  • 火力発電は化石燃料やバイオマスなどの熱エネルギーを電力に変換する発電方式である。
  • ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせたコンバインドサイクル発電により、高い発電効率が実現されている。
  • 環境負荷低減のため、集塵装置や排煙脱硝・脱硫装置などの煤煙処理設備が備えられている。

火力発電(かりょくはつでん)は、石油、石炭、天然ガスといった化石燃料や、木質燃料、廃棄物などのバイオマス燃料を燃焼させることで得られる熱エネルギーを、電力へと変換する発電方式である。火力発電を行う施設は火力発電所と呼ばれる。

大規模な火力発電所の全景
大規模な火力発電所の全景

水力発電と比較して、発電所の建設費が比較的安価であり、立地に関する自然的条件の制約が少ない。また、大容量の設備を設置しやすく、電力需要の大きい大消費地に近接した地点に建設できるため、電力送電時の送電ロスを少なく抑えられるという利点がある。

欧州最大の石炭火力発電所であるポーランドのベウハトゥフ発電所
欧州最大の石炭火力発電所であるポーランドのベウハトゥフ発電所

一方で、燃料の燃焼に伴い温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)を排出するほか、大気汚染の原因となる物質を生じる課題がある。燃料の種類によっては、窒素酸化物(NOx)や硫黄酸化物(SOx)などの有害物質を多量に含む排ガスが発生するため、厳格な排煙処理が不可欠となる。

火力発電所の設備系統を示す図
火力発電所の設備系統を示す図
発電プロセスの詳細を示す図
発電プロセスの詳細を示す図
タービン設備周辺の構造
タービン設備周辺の構造
発電機および変圧器系統の構造
発電機および変圧器系統の構造
冷却水系統および復水器の配置図
冷却水系統および復水器の配置図
排煙処理設備のフロー図
排煙処理設備のフロー図

主要な設備と仕組み

火力発電所は、燃料の燃焼熱を回収し、機械的エネルギーを経て電気エネルギーへ変換するため、多種多様な機器や設備で構成されている。

ボイラー

石炭、石油、または天然ガス(LNG)を燃焼させて得た熱を水に伝え、高圧の水蒸気を生成する設備である。ボイラーで使用される水には極めて高い純度が求められるため、水処理装置を用いて硬度分やシリカ、溶存ガスなどが徹底的に除去される。発電用ボイラーの多くは伝熱部が水管で構成された水管ボイラーであり、熱効率を高めるために再熱式が採用されることが多い。

ガスタービン

燃料の燃焼によって生成された高温高圧のガスでタービンを回転させ、回転運動エネルギーを得る内燃機関である。天然ガスなどを燃料とし、蒸気タービンに比べて起動時間が短いため、電力需要のピーク時における調整用電源として利用されてきた。近年では、ガスタービンと蒸気タービンを組み合わせた高効率なコンバインドサイクル発電方式への導入が進んでいる。

電気の史料館に展示保存されている東京電力千葉火力発電所旧1号タービン発電機
電気の史料館に展示保存されている東京電力千葉火力発電所旧1号タービン発電機

蒸気タービン

ボイラーや排熱回収ボイラーで生成された高圧の水蒸気が持つエネルギーを、タービンブレード(羽根車)と軸を介して回転運動へと変換する装置である。高圧、中圧、低圧の各タービンを組み合わせることで、エネルギーの回収効率を高めている。

復水器と冷却設備

蒸気タービンで使用された後の水蒸気を冷却して水に戻す装置である。タービン出口側を低圧状態に保つことでランキンサイクルとしての効率的な動作を完結させる。日本では海水を冷却水として利用する表面復水器が広く用いられている。

煤煙処理設備

環境負荷を低減するため、排ガス中の有害物質や微粒子を除去する各種設備が備えられている。静電気の力で煤塵を捕集する電気式集塵装置、窒素酸化物を低減する排煙脱硝装置、硫黄酸化物を低減する排煙脱硫装置などが代表的である。

JERA横浜火力発電所の煙突
JERA横浜火力発電所の煙突

煙突

燃焼排気を上空へ導き、地表付近の汚染物質濃度を拡散・低減させるための構造物である。法的な視認要件を満たすとともに、発電所の象徴的な建造物となることもある。

環境への影響と次世代技術

火力発電は電力需要の変動に対して柔軟に出力を調整できる安定した電源である一方、大量の二酸化炭素を排出することから、地球温暖化対策における脱炭素化が重要な課題となっている。これに対し、アンモニアの混焼・専焼技術や、水素を燃料に利用する次世代型火力発電の開発・実証試験が進められている。

よくある質問

火力発電の主なメリットは何ですか?
水力発電に比べて建設費が安く、立地の制約が少なく、大容量の設置や電力需要の変化に応じた柔軟な出力調整が可能である点です。
コンバインドサイクル発電とはどのような仕組みですか?
ガスタービンで発電を行った後、その高温の排気を利用してボイラーで蒸気を発生させ、さらに蒸気タービンでも発電を行うことで、全体として高い熱効率を得る発電方式です。
環境負荷を抑えるための設備にはどのようなものがありますか?
煤塵を低減する電気式集塵装置、窒素酸化物を低減する排煙脱硝装置、硫黄酸化物を低減する排煙脱硫装置などが使用されています。

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参考文献

  • 『図解入門 よく分かる最新火力発電の基本と仕組み』秀和システム、2011年。
  • 高橋毅 編『進化する火力発電-低炭素化・低コスト化への挑戦-』日刊工業新聞社、2012年。