火災積雲と熱対流雲の気象学的特徴と発生メカニズム

📌 主なポイント
- ✓火災積雲は、山火事や火山噴火などの熱の影響によって生じる積雲である。
- ✓2017年の国際雲図帳改訂により、学術名として「熱対流雲(flammagenitus)」が採用された。
- ✓雲の内部には激しい乱気流が存在し、火山雷などの雷を伴うことがある。
火災積雲(かさいせきうん)または火災雲とは、火災などの熱の影響によって生じる積雲である。英語圏では従来pyrocumulusと呼ばれていた。
より新しい用語として、火災や火山活動の熱が引き起こす対流の結果生じる雲を指す熱対流雲(flammagenitus cloud)がある。また、垂直方向により発達したものは火災積乱雲と呼ばれる。

名称と国際分類
従来の名称について、日本語文献では『気象科学事典』に「火災雲」の項目が存在するが、『学術用語集 気象学編(増訂版)』には「火災積雲」や「火災積乱雲」は収録されていない。
「熱対流雲(flammagenitus)」は、2017年に改訂された世界気象機関(WMO)の国際雲図帳で採用された学術名であり、起源が特殊な雲である「special clouds」の一種に位置づけられている。以前の1975年版国際雲図帳では「Clouds from fires(火災による雲)」として紹介されていた。ラテン語で炎を意味するflammaと、~から生まれたを意味するgenitusを組み合わせたもので、略号はflgenである。

形成のメカニズム
火災積雲は、地面から空気が強く熱せられることによって形成される。主な熱源としては、火山の噴火、山火事、製油所の火災などが挙げられる。これらの熱源による強い加熱によって大気の対流が起こり、空気塊は通常水蒸気が存在する条件の下で浮力がなくなる高度まで上昇して積雲を形成する。大気中で核兵器が爆発した場合も、同様の仕組みでキノコ雲状の火災積雲が形成されることがある。
また、下層ジェットの存在は火災積雲の形成を促進する場合がある。周囲の既存の水蒸気に加え、燃えた植物から蒸発して生じた水蒸気は、灰の粉塵に速やかに凝結して雲になりうる。

物理的特徴と付随現象
火災積雲は、火災に伴う灰や煙の影響によって灰色や茶色に見えることが多い。灰の存在によって凝結核の量が増加するため、雲が発達しやすい傾向にある。
内部には激しい乱気流が存在し、それによって地表面に強い突風が吹き、火災をさらに助長・拡大させることがある。また、大きな火災積雲や火山噴火に伴うものは雷(火山雷)を伴う場合がある。火山雷の発生は、強い乱気流や雲中の灰粒子の性質による電荷の分離、および上部が氷点下に達することで生じる氷の静電特性が寄与していると考えられている。

山火事への影響
火災積雲は火災に対して複雑な影響を及ぼす。一方で、雲の中で大気中の水蒸気が凝結して雨となり、消火の役割を果たすこともある。しかし、火災が非常に大規模になると雲がさらに成長して火災積乱雲となり、落雷を発生させて新たな火災を引き起こす要因ともなる。

よくある質問
火災積雲とは何ですか?
熱対流雲(flammagenitus)とは何ですか?
火災積雲の色が灰色や茶色に見えるのはなぜですか?
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参考文献
日本気象学会 編『気象科学事典』東京書籍、1998年10月。
村井昭夫、鵜山義晃『新・雲のカタログ 空がわかる全種分類図鑑』草思社、2022年。
WMO(世界気象機関)国際雲図帳(International Cloud Atlas)2017年版。