火災旋風:発生メカニズムと大規模災害における影響

📌 主なポイント
- ✓火災旋風は、大規模な火災時に発生する局地的な強い風を伴う炎の旋風である。
- ✓発生メカニズムには、周囲からの空気の流入や気流の傾きによって形成される渦が関係している。
- ✓関東大震災をはじめとする大規模な地震火災や空襲、山火事などで発生が確認されている。
火災旋風(かさいせんぷう、火事旋風)とは、山火事や市街地の大火などの大規模な火災の際に発生することがある、局地的に強い風を伴う炎の旋風である。外観が竜巻に似ることもあるが、竜巻が上空の大気状態に起因して発生するのとは異なり、火災に伴う熱対流によって引き起こされる現象である。

発生メカニズム
火災旋風の発生メカニズムについては現在も研究が進められている段階であるが、いくつかの主要な説が提唱されている。
一般的な説の一つとして、個々に発生した火災が周囲の空気中の酸素を消費し、火災の起きていない周辺部から新鮮な空気を取り込むことで局地的な上昇気流が生じる現象が挙げられる。これにより、燃焼の中心部分から熱せられた空気が上層へと激しく吐き出され、炎を伴う旋風が形成されると考えられている。

また、一定以上の風がある気象条件下では、火災域から生じる上昇気流が風下側に傾くことが知られている。消防庁消防大学校などの屋外実験では、こうした状況下で上昇気流が二股に分かれ、互いに逆方向に回転する1対の渦を形成することが確認されている。この対をなす渦が、延焼速度を早めたり飛び火の方向性に影響を与えたりする要因になると指摘されている。

分類
火災旋風は、その形態や発生状況に応じていくつかのタイプに分類されることがある。
- 黒煙状の竜巻状渦:火炎を伴わないもので、火災域の周辺部や風下側で発生しやすい。
- 火柱状渦:火炎を伴う旋風であり、火災域の内部で発生する。
- 火災嵐(ファイアーストーム):火災域全体の空気が大規模に旋回する現象を指す。


主な発生事例
火災旋風は、歴史的に地震等の自然災害や大規模空襲に伴う市街地火災で多数確認されてきた。
1923年の関東大震災では、東京の本所被服廠跡において多数の死者が発生した要因の一つとして火災旋風が挙げられている。また、横浜や小田原などの各地でも発生が報告されており、当時の記録や研究によると、建造物や人間が巻き上げられるほどの猛烈な上昇気流や、長距離を移動した事例が指摘されている。
被害の特徴
火災旋風の内部は猛烈な炎の旋風となり、局所的な高温や強風を引き起こす。巻き込まれた場合、高温のガスや炎を吸引することによる呼吸器の損傷や窒息死、ならびに高熱の輻射熱による重大な被害が生じるおそれがある。
よくある質問
火災旋風と竜巻はどのように違いますか?
火災旋風はどのような場所で発生しやすいですか?
関連記事
参考文献
- 気象科学事典「火災雲」(小倉義光著、東京書籍)
- 小学館 デジタル大辞泉「火災旋風」
- 平凡社 改訂新版 世界大百科事典「火事旋風」(竹内清秀執筆)
- 日本流体力学会誌「ながれ」第19巻第2号(佐藤晃由、K. T. Yang、2000年)
- 消防研修 第104号「広域火災における火災旋風・飛火による被害の防止に向けた研究」(篠原雅彦ら、2018年)