河川堤防の構造と治水技術の仕組み

📌 主なポイント
- ✓堤防は河川や海洋の水が人家のある地域に浸入するのを防ぐための治水構造物である。
- ✓盛土による堤防の法勾配は原則として50パーセント以下と定められている。
- ✓高規格堤防(スーパー堤防)は、越水時にも急速な崩壊を招かないよう裏法面を3パーセント以内の緩やかな勾配にした構造を持つ。
堤防(ていぼう、英語: levee)とは、人家のある地域に河川や海洋の水が浸入しないように、河岸や海岸、運河に沿って土砂を盛り上げた治水構造物のことである。一部は「土手」とも呼ばれる。
河川堤防の構造と各部名称
河川の堤防は主に洪水時の氾濫を防ぐ目的で設けられる。堤防に関する空間的な位置関係として、堤防から見て河川のある側を堤外(ていがい)、その反対側の人家がある側を堤内(ていない)と呼ぶ。これは人家のある土地を堤防で囲って護るという考え方に由来する。
堤防の平坦になった頂部は天端(てんば)、もしくは馬踏(ばふみ)と呼ばれ、計画高水流量により幅が決められる。天端には河川管理用通路が設けられ、必要に応じて敷砂利やアスファルト舗装が施される。また、天端の両端の法肩から下る斜面は法面(のりめん)と呼ばれ、堤外側の斜面を表法(おもてのり)、堤内側の斜面を裏法(うらのり)という。法律上の規定により、盛土による堤防の法勾配は原則として50パーセント以下と定められている。
堤防の種類
治水上の目的や設置場所に応じて、以下のような多様な堤防や関連施設が存在する。
- 本堤:洪水を防ぐ役割を主に担う連続堤。
- 副堤(控え堤・二線堤):本堤の保護やバックアップ目的で設けられる小さい堤防。
- 横堤:河道とほぼ直角に、本堤から河川に向かって設けられ、洪水の流れを受け止めて流速を落とす堤防。
- 囲繞堤・周囲堤:遊水池と川、あるいは遊水池と人家を隔てる堤防。
- 背割堤:河川の合流部に二つの流れを分けるように設けられる堤防。
- 輪中堤:集落や耕地の周囲をぐるりと囲うように設けられる堤防。
設計と水位の基準
日本において河川堤防は河川法に定める河川管理施設であり、その設計は位置、高さ、幅の3要素から構成される。高さの決定においては「計画高水位」が基準となり、安全に流せる最大の流量である「計画高水流量」から導き出される。
防災上の水位としては、はん濫危険水位、避難判断水位、はん濫注意水位などが定められており、水防法に基づいて国や都道府県が指定する洪水予報河川などで運用されている。
高規格堤防(スーパー堤防)
通常の堤防は越水が起こると土砂が削られて破堤につながるが、万一の越水でも急速な崩壊を招かぬよう、裏法面を3パーセント以内の緩やかな勾配としたものを高規格堤防と呼ぶ。1987年に建設省(現・国土交通省)が事業として着手し、利根川、江戸川、荒川、多摩川、淀川、大和川の主要水系で整備が進められてきた。
破堤のメカニズム
堤防が崩壊して川の水が流れ出す現象を破堤(決壊)と呼ぶ。主な要因には以下のものがある。
- 越水破堤:堤防の高さを超えて水が溢れることで発生する崩壊。
- 洗掘破堤:河川の流水が直接堤防を削り取り決壊するもの。
- 浸透破堤:河川の水位上昇に伴い堤防内にも水が浸透し、内部の土粒子間の接触が弱まって削り取られるもの。
- パイピング破堤:河川の水位差により浸透流が発生し、基礎地盤の土砂が流出して陥没する現象。