物理学

軽水:性質と原子力分野における重要性

一般的な水である軽水の定義や組成、重水との違い、および原子力分野において熱中性子の吸収特性がもたらす区別の必要性について解説します。

📌 主なポイント

  • 軽水は一般的な水の別称であり、重水と区別して用いられる。
  • 天然の水における軽水の占める割合はおよそ99.74%である。
  • 軽水は熱中性子に対する吸収断面積が重水に比べて大きい。

軽水(けいすい)とは、一般的には私たちが日常的に目にする普通の水の別称であり、重水素から構成される分子を含み通常の水より密度が高い「重水」に対して区別される呼称である。また、より厳密な文脈では、質量数1の水素同位体(軽水素)と質量数16の酸素同位体から構成される分子($1\text{H}_2{}^{16}\text{O}$)からなる水を指す場合もある。

組成と存在比

天然の水は、重水素などの異なる同位体を含む分子がわずかに混ざり合った混合物である。純粋に$1\text{H}_2{}^{16}\text{O}$のみを取り出すことは技術的に容易ではなく、実際には微量の重水を含んだ天然の水全般を指して軽水と呼ぶことが一般的である。天然水における軽水(同位体組成の観点からの定義)の占める割合はおよそ99.74%に達する。

原子力分野における区別の必要性

原子力の分野において、軽水と重水は明確に区別して扱われる。これは両者が持つ中性子に対する核物理学的性質の違いに起因する。軽水は熱中性子に対する吸収断面積($\sigma = 0.644$)が比較的大きく、中性子を吸収しやすい性質を持つ。これに対し、重水は熱中性子吸収断面積($\sigma = 0.001$)が非常に小さいため中性子を吸収しにくい。この特性の違いから、原子炉の減速材や冷却材の選定において重要な意味を持ち、軽水を利用する原子炉は一般に軽水炉と呼ばれている。

よくある質問

軽水と重水の違いは何ですか?
軽水は通常の水であり、重水は重水素から構成され軽水よりも密度が高い水です。また、原子力分野では熱中性子を吸収しやすい性質(軽水)か、吸収しにくい性質(重水)かという違いがあります。
天然水における軽水の割合はどのくらいですか?
同位体組成の観点から定義される軽水は、天然水の中で約99.74%を占めています。
なぜ原子力分野で軽水と重水が区別されるのですか?
熱中性子に対する吸収断面積が大きく異なるためです。軽水は中性子を吸収しやすい一方、重水は吸収しにくい性質を持っています。

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参考文献

  • 水ハンドブック編集委員会編 『水ハンドブック』 丸善、2003年
  • 水の総合辞典編集委員会編 『水の総合辞典』 丸善、2009年
  • 高橋裕、久保田昌治、蟻川芳子、門馬晋、綿抜邦彦、和田攻、内藤幸穂、平野喬 『水の百科事典』 丸善、1997年
  • 八木浩輔 『基礎物理学シリーズ4 原子核物理学』 朝倉書店、1989年