歴史学

歴史における「古代」の概念と時代区分

歴史学における「古代」の定義、地域ごとの時代区分の考え方、およびその学術的な議論について解説します。

📌 主なポイント

  • 古代は歴史学において、文字記録による記述が可能な時代の始まりを指す。
  • 西洋史における古代は、古典古代(ギリシア・ローマ)を基軸として定義されることが多い。
  • 日本史における古代の始期・終期については、政治権力や社会体制の変化を基準に複数の学説が存在する。
  • 発展段階史観に基づく「古代=奴隷制社会」という定義は、現代の歴史学では批判的に再検討されている。

「古代」とは、世界の歴史を区分する際の主要な時代概念の一つであり、一般的に文明の成立から、その文明の崩壊や社会構造の大きな転換点までを指します。歴史学においては、文字記録によって過去を語り始めることができる「歴史時代」の始まりを意味する用語として用いられます。

概念の起源と古典古代

「古代」という区分は、中世や近代と対比される「三時代区分」の一部として形成されました。その原点は、古代ギリシアおよび古代ローマを指す「古典古代」にあります。欧米の歴史学において、これらの地域は文化的伝統やアイデンティティの源流とみなされてきました。日本の歴史学界においても、この概念を基盤とした時代区分が伝統的に採用されています。

地域別の時代区分

古代の始期と終期については、政治史や社会史の観点から地域ごとに多様な見解が存在します。

西洋史

西洋史においては、エーゲ文明の成立(紀元前3000年頃)を始期とし、西ローマ帝国の崩壊(476年)を終期とするのが一般的です。また、ローマ帝国の変容期から7世紀頃までを「古代末期」として独立した区分とする研究も進められています。

日本史

日本史における古代の定義は、研究者の間で長年議論の対象となっています。始期については、ヤマト王権の形成時期をめぐり、3世紀、5世紀、7世紀など諸説が存在します。終期についても、11世紀後半の院政開始や、12世紀の保元の乱を画期とする説など、武士の台頭や荘園公領制の確立といった社会構造の変化を基準に多様な見解が示されています。また、日本史に「古代」という概念を適用することの妥当性について、建築史や比較史の観点から批判的な検討を行う研究者も存在します。

発展段階史観と古代

かつて歴史学の一部では、発展段階史観に基づき、古代を「奴隷制社会」と定義する見方が主流でした。これは、古代社会において奴隷が生産の主体を担っていたとする考え方です。しかし、現代の歴史学では、このような単線的な発展段階説は疑問視されています。地域によって社会構造は複雑であり、奴隷制が普遍的あるいは支配的ではなかった社会も多く存在することが指摘されています。

よくある質問

「古代」と「先史時代」の違いは何ですか?
先史時代は文字記録が存在しない時代を指し、古代は文字記録によって歴史が記述されるようになった時代を指します。
日本史に古代は存在しないという説があるのはなぜですか?
西洋の歴史区分をそのまま日本に当てはめることの妥当性や、社会構造の特異性を考慮し、日本史に「古代」という枠組みを設けること自体に疑問を呈する研究者が存在するためです。
古代末期とはどのような時代ですか?
西洋史において、古典古代から中世へと移行する過渡期を指し、ローマ帝国の変容から7世紀頃までの期間を指すことが多い概念です。

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先史時代古典古代古代末期歴史学時代区分

参考文献

  • 近藤和彦編『西洋世界の歴史』(山川出版社、1999年)
  • 井上章一『日本に古代はあったのか』(角川選書、2014年)
  • 都出比呂志『古代国家はいつ成立したか』(岩波新書、2011年)
  • 松沢祐作「時代 -時代を分けることと捉えること-」(『大人のための社会科』有斐閣、2017年)