口頭言語の性質と書記言語との関係性
📌 主なポイント
- ✓口頭言語は、話し手と聞き手の間で音声を用いて行われるコミュニケーションを典型とする言語変種である。
- ✓すべての自然言語に口頭言語が存在する一方、書記言語を持たない言語も存在する。
- ✓明治時代の言文一致運動により確立された言文一致体は、口頭言語そのものではなく書記言語の一種である。
口頭言語(こうとうげんご)とは、話し手と聞き手の間で口頭の音声を用いてコミュニケーションを行うことを典型とする言語変種の一つである。人間が自然に習得するものであり、文字教育を前提とする書記言語とは区別される。文章として書くのではなく口頭で話す際に用いられる言葉遣いは「口語」とも呼ばれる。
音声言語および書記言語との関係
口頭言語は典型的には音声を媒介とする「音声言語」として現れるため、両者は混同されて用いられることがある。すべての自然言語には口頭言語が存在し、乳幼児が母語として習得し始めるのに対し、書記言語を持たない言語も存在する。
書記言語の習得には教育が必要であり、日常会話は口頭言語で行い、公的な場では書記言語を用いるという分化が見られることが多い。また、口頭言語は伝統的な文法や統語論から外れる場合があるが、これは即興的な発話の性質によるものだけでなく、文法自体が書記言語を基準に整備されてきた側面もある。
過去の言語資料と文字による口頭言語の表現
歴史的な言語を研究する際、音声資料が存在しない場合は文献資料に頼ることになるが、文献の大部分は書記言語で書かれているため、文字資料から当時の口頭言語の実態を直接推測することは困難である。文学作品や脚本の会話文は口頭言語を整えた形で表現したものであり、そのままの実態を示しているわけではない。しかし、20世紀末以降の電子メールやチャット、ウェブサイトなどの電子メディアにおいては、口頭言語に近い砕けた表現が文字によって多く書き表されるようになっている。
言文一致運動との関わり
口頭言語と書記言語の間で言葉遣いが乖離することは珍しくない。日本においては、明治時代に起こった言文一致運動によって、小説などの表現において従来の文語体に代わり、当時の口頭言語に近い文体を取り入れようとする試みがなされた。その結果として確立された言文一致体は、実際の口頭言語そのものではなく、あくまで書記言語の一種である。