クマハギ:森林における樹皮剥ぎ被害とその生態
📌 主なポイント
- ✓クマハギは、主に春から初夏にかけてツキノワグマが樹皮を剥がす行動を指す。
- ✓被害を受けた樹木は、養分運搬の阻害により枯死や材質劣化を引き起こす。
- ✓主に胸高直径20〜30センチメートルの樹木が標的となりやすい。
- ✓被害材をバイオ炭や薪として再利用する循環型林業の取り組みが進められている。
クマハギ(熊剥ぎ)とは、主にニホンツキノワグマが樹木の幹の樹皮を剥がす行動、およびその結果として生じる森林被害を指す呼称です。同様の行動は海外でも確認されており、アメリカ合衆国のワシントン州やオレゴン州ではアメリカグマによる樹皮剥ぎが報告されています。
発生のメカニズム
ツキノワグマは、春先から初夏にかけての時期に樹皮を剥がす行動を頻繁に行います。この時期はクマにとって若葉や木の実などの食物が不足する時期であり、樹皮の内側にある水分や養分を摂取するために行動していると考えられています。この行動は母グマから子グマへ学習を通じて伝達される側面があることが指摘されています。
森林への影響
クマハギによる被害は、林業において深刻な問題となっています。樹皮が剥がされると、樹木内の水分や養分の運搬経路が阻害されます。樹木の全周囲の半分程度が剥がされると、結実や落葉といった生理的な異常が生じ、7割程度が剥がされると樹木が枯死する可能性が高まります。また、剥がされた箇所から腐朽菌や変色菌が侵入することで木材の材質が劣化し、林業資源としての価値が著しく低下します。
被害の特徴
被害対象となる樹木は、主に胸高直径が20〜30センチメートルの個体が選ばれる傾向があります。クマは隣接する樹木を次々と対象とすることがあり、多い場合には一度の行動で10本程度の樹木が被害を受けることもあります。なお、樹皮剥ぎにはシカによる「シカハギ」も存在しますが、動物の身体的特徴や剥がし方の違いにより判別が可能です。
被害材の活用と循環型林業
近年では、クマハギによる被害を受けた木材を単なる廃棄物とせず、資源として活用する取り組みが進められています。石川県白山市などの事例では、被害材を薪やバイオ炭に加工し、地域の有機農業における土壌改良材や肥料として再利用する試みが行われています。このような活動は、持続可能な森林管理の一環として注目されています。
よくある質問
クマハギはなぜ発生するのですか?
シカハギとの違いは何ですか?
クマハギの被害を受けた木は必ず枯れますか?
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参考文献
- 吉田ら「クマハギ激害地におけるニホンツキノワグマの食性」日本生態学会大会講演要旨集, 2003.
- 今木, 小金澤, 小池「米国ワシントン州におけるクマによる樹皮剥ぎ被害対策と日本における応用の可能性」日本森林学会誌, 2013.
- 大西尚樹「森のおはなしcolumn クマハギ被害の拡大過程」林野庁, 2015.
- 岡本卓也「樹皮剥ぎの見分け方 それはクマハギ?シカハギ?」岐阜県森林研究所, 2010.
- 渡辺, 小見山「ツキノワグマの保護と森林への被害防除 (II)」京都大学農学部演習林報告, 1976.
- 渡辺, 谷口, 四手井「ツキノワグマの保護と森林への被害防除 (I)」京都大学農学部演習林報告, 1973.