物理学
ラムダ点

ラムダ点とは、潜熱を伴わない相転移において比熱容量が急激に変化する温度点のこと。特に液体ヘリウムの超流動転移に関連して知られる物理現象です。
📌 主なポイント
- ✓ラムダ点は、比熱容量のグラフが転移点で尖点を持つ相転移の温度点である。
- ✓液体ヘリウムの常流動相から超流動相への転移は、代表的なラムダ転移である。
- ✓標準気圧下における液体ヘリウムのラムダ点温度は約2.17 Kである。
- ✓ラムダ点付近の精密な測定には、重力の影響を排除した無重力環境が利用される。
ラムダ点(ラムダてん、英: lambda point)は、物質の相転移において、温度に対する比熱容量のグラフが転移点で鋭い尖点(ピーク)を持つ現象を指す物理学用語です。このグラフの形状がギリシャ文字の「λ(ラムダ)」を左右反転させた形に似ていることから名付けられました。1922年にフランシス・シモンが塩化アンモニウムの相転移において発見し、後にポール・エーレンフェストによって「λ転移」と定義されました。

液体ヘリウムにおけるラムダ点
物理学において最も代表的なラムダ点の例は、液体ヘリウムの常流動相(ヘリウムI)から超流動相(ヘリウムII)への相転移です。標準気圧下におけるこの転移温度は約2.17 Kです。
ラムダ転移が起こる圧力範囲には限界が存在します。下限は飽和蒸気圧曲線上の約5.048 kPa(転移温度約2.1768 K)であり、上限は固体ヘリウムと液体ヘリウムが共存する約29.725 atm(約3,011.9 kPa、転移温度約1.762 K)です。
臨界指数と測定
ラムダ点付近では比熱容量が非常に鋭く変化するため、その振る舞いを特徴づける「臨界指数」の測定には高度な精度が求められます。地球上では重力の影響により液体ヘリウムの密度分布が不均一になるため、正確な測定には無重力環境が不可欠です。
1992年にスペースシャトル内で行われた実験では、ラムダ点から2 nK以内の極めて近い領域における熱容量が測定され、臨界指数αの値が−0.0127±0.0003であるという結果が得られました。
よくある質問
なぜ「ラムダ点」と呼ばれるのですか?
温度に対する比熱容量をプロットしたグラフの形状が、ギリシャ文字の「λ(ラムダ)」を左右反転させた形に似ていることから名付けられました。
ラムダ転移はどのような物質で起こりますか?
液体ヘリウムの超流動転移が有名ですが、塩化アンモニウムなどの特定の結晶構造を持つ物質でも観測されます。
なぜラムダ点付近の測定には無重力環境が必要なのですか?
重力によって液体ヘリウムの密度が場所によってわずかに異なってしまうため、転移点付近の極めて狭い温度範囲で正確な熱容量を測定することが困難になるからです。
関連記事
超流動相転移比熱容量液体ヘリウム臨界現象
参考文献
- 三省堂編修所編『物理小事典』第4版、三省堂、2008年。
- 佐々木祥介「低温物理を開拓した人々」『月刊うちゅう』第365号、大阪市立科学館星の友の会、2014年。
- Donnelly, R. J., & Barenghi, C. F. (1997). The Observed Properties of Liquid Helium at the Saturated Vapor Pressure. J. Phys. Chem. Ref. Data.
- Lipa, J. A., et al. (2003). Specific heat of liquid helium in zero gravity very near the lambda point. Phys. Rev. B.