民事訴訟
リーベック対マクドナルド事件
1992年に発生したリーベック対マクドナルド事件の概要、裁判の経緯、および賠償金をめぐる誤解について解説します。
📌 主なポイント
- ✓1992年にニューメキシコ州で発生した民事訴訟である。
- ✓原告のステラ・リーベックは第3度の重度火傷を負い、皮膚移植手術を受けた。
- ✓陪審員はマクドナルド側の過失を80%と認定し、警告不足を指摘した。
- ✓最終的な和解金額は非公開であり、メディアで報じられた巨額の賠償金とは異なる。
リーベック対マクドナルド事件(Liebeck v. McDonald's Restaurants)は、1992年にアメリカ合衆国ニューメキシコ州で発生した、コーヒーによる火傷事故をめぐる民事訴訟である。本件は、訴訟大国アメリカの象徴としてしばしば引用されるが、その実態は重度の火傷を負った原告による治療費補償を求める訴えであった。
事件の経緯
1992年2月、当時79歳のステラ・リーベックは、ニューメキシコ州アルバカーキのマクドナルドのドライブスルーでコーヒーを購入した。停車中にカップの蓋を開けようとした際、コーヒーが膝にこぼれ、彼女は第3度の重度火傷を負った。リーベックは皮膚移植を含む7日間の入院と、長期間の治療を余儀なくされた。
裁判と判決
リーベック側は当初、治療費として約1万1000ドルの支払いを求めたが、マクドナルド側は800ドルの提示にとどまったため、訴訟に至った。陪審員は、マクドナルドが提供するコーヒーの温度(約85度)が極めて高く、過去に同様の苦情が多数寄せられていたにもかかわらず適切な警告を行っていなかったと判断した。陪審はリーベックに20%、マクドナルドに80%の過失があるとし、懲罰的損害賠償を含む評決を下した。その後、判事による減額を経て、最終的に非公開の金額で和解が成立した。
社会的影響
本件は、企業が提供する製品の安全性と警告表示の重要性を再認識させる事例となった。事件後、米国マクドナルドをはじめとする多くの飲食店は、カップに「内容物が熱い」旨の警告を表示するようになった。一方で、メディアを通じて「コーヒーをこぼしただけで巨額の賠償金を得た」という簡略化された情報が広まり、訴訟システムの弊害を象徴する事例として誤解されることも多い。
よくある質問
リーベックはコーヒーをこぼしただけで訴えたのですか?
いいえ。彼女は第3度の重度火傷を負い、皮膚移植を含む長期の治療が必要となりました。当初は治療費の補償を求めていました。
なぜマクドナルドは多額の賠償を命じられたのですか?
陪審員は、提供されるコーヒーの温度が極めて高く、過去に同様の苦情が多数あったにもかかわらず、適切な警告表示がなされていなかった点を重く見たためです。
この事件は訴訟ビジネスの例と言えますか?
メディアではそのように揶揄されることもありますが、実際には企業側の安全対策の不備が問われた事例です。ただし、この裁判以降、同様の訴訟が注目されるきっかけとなった側面もあります。
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参考文献
- CNN. 「ダンキンのコーヒーで大やけど」、原告の女性が4億5千万円で和解. 2023年10月27日.